研究課題/領域番号 |
18K06134
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
杉山 康憲 香川大学, 農学部, 准教授 (10632599)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 2型糖尿病 / 糖毒性 / インスリン / 転写制御 / プロテインキナーゼ / CPG16 / JDP2 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病における慢性的な高血糖の持続は糖毒性(膵臓beta細胞におけるインスリン分泌・発現低下)を引き起こし、糖尿病合併症を誘発することが問題となっている。 本研究において我々は、糖毒性におけるインスリン発現抑制機構について解析したところ、新規インスリン発現抑制因子としてセリン/スレオニンキナーゼであるCandidate plasticity gene 16 (CPG16)を見出した。CPG16は膵臓beta細胞において慢性的な高グルコース処理によってmRNAレベルおよびタンパク質レベルにおいて発現量が増加した。また、2型糖尿病モデル細胞であるラット膵臓beta細胞由来インスリノーマINS-1細胞にCPG16を過剰発現させると、キナーゼ活性依存的にインスリン発現が抑制された。さらに、CPG16の基質としてJun dimerization protein 2 (JDP2)を見出した。CPG16はJDP2のDNA結合領域をリン酸化した。また、JDP2をINS-1細胞に過剰発現するとインスリン転写活性が増加することから、JDP2が新規インスリン転写因子であることを示した。加えて、JDP2はインスリンプロモーター上のG1領域に結合することを見出した。また、JDP2によるインスリン遺伝子の転写活性化はCPG16のキナーゼ活性依存的に抑制された。さらに、糖毒性状態のINS-1細胞において、CPG16はJDP2の局在を核から細胞質へ移行することを明らかとした。これらより、2型糖尿病が深刻化する新たな分子機構としてCPG16-JDP2経路を介したインスリン発現抑制メカニズムを提唱する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖毒性におけるCPG16とJDP2を介したインスリン発現抑制機構の分子メカニズムを解明することが本研究の目的である。 今年度は、通常核に局在するJDP2が、糖毒性状態のINS-1細胞においてCPG16との共発現によって細胞質へ移行することを見出した。また、CPG16がJDP2のC末端側のDNA結合領域をリン酸化することを明らかとした。加えて、マウスランゲルハンス島における内在性JDP2の発現を確認した。これらより、CPG16-JDP2経路を介したインスリン発現抑制機構の分子メカニズムの解析はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究と同様に糖毒性におけるCPG16とJDP2を介したインスリン発現抑制機構を解析していく。まず、JDP2とインスリンプロモーター上のG1領域との結合がCPG16によるリン酸化によって制御されているかをChIPアッセイにより解析する。また、JDP2が他の転写因子とヘテロ二量体を形成して機能するのかを明らかとするため、これまでに知られているインスリン転写因子をクローニングして組換えタンパク質を取得し、複合体形成およびインスリンプロモーターとの結合、インスリン転写活性へ及ぼす影響を解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金およびその他に計上していた予算が必要でなくなったため、次年度使用額が若干生じた。 この予算は次年度の物品費に計上する。
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