研究実績の概要 |
2型糖尿病における慢性的な高血糖の持続は糖毒性(膵臓beta細胞におけるインスリン分泌および発現低下)を引き起こし、糖尿病合併症を引き起こすことが問題となっている。 本研究において我々は、糖毒性において発現量が増加するセリン/スレオニンキナーゼであるCandidate plasticity gene 16 (CPG16)がインスリンの発現抑制を担うことを明らかとした。さらに、CPG16の基質としてJun dimerization protein 2 (JDP2)を見出し、JDP2がインスリンプロモーター上のG1エレメントに結合してインスリンの発現を正に制御する転写因子であることを示した。CPG16はJDP2のDNA結合領域をリン酸化し、JDP2のThr116のリン酸化がインスリン発現の抑制に必須であることを見出した。これらより、2型糖尿病を深刻化させる新たな分子機構としてCPG16-JDP2経路を介したインスリン発現抑制メカニズムが重要な役割を担うことが示唆された。これらの研究成果は、Molecular and Cellular Endocrinologyにて発表した。 次に、JDP2を介したインスリン発現制御機構を詳細に解析した。JDP2はインスリン転写因子であるATF2, PDX-1, MafAと直接結合することが示された。さらに、JDP2はATF2とヘテロ二量体を形成してインスリン発現を抑制し、MafAと結合してインスリン発現を相乗的に促進することを見出した。これらの結果は、JDP2とインスリン転写因子を介した複雑かつ緻密なインスリン発現制御機構が存在することを示唆する。
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