研究課題/領域番号 |
18K06138
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
井上 弘樹 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (10294448)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん / 浸潤 / 転移 / 微小管 / アクチン |
研究実績の概要 |
がん細胞が形成する浸潤突起はアクチン繊維に富む細胞膜の突起状構造で細胞外基質を分解する活性を有することから,がん細胞の浸潤転移と密接に関係することが指摘されている。浸潤突起の形成と機能には微小管とアクチン繊維の2種の細胞骨格の相互作用が不可欠であるが,その分子メカニズムはこれまでのところほとんど明らかになっていない。また,浸潤突起には小胞輸送により細胞外基質分解酵素などが極性輸送されるがその制御機構についても未解明の点が多く残されている。本研究では,微小管とアクチン繊維の双方に結合するタンパク質に注目し,それが微小管とアクチン繊維の相互作用を仲介し,がん細胞の浸潤突起形成,浸潤転移に関わる可能性を検証し,その分子メカニズムを明らかにすることを目指す。また,浸潤突起への小胞輸送を制御する可能性についても解析する。本研究を進めることは浸潤転移の分子機構を理解することにとどまらず,がんの診断,治療の標的を提示する可能性も秘めていると考える。 アクチン繊維と微小管の協調的相互作用を制御する分子はそれ自身が微小管とアクチン繊維の双方に結合する能力を持つことが期待されるが,申請者はそのような分子の候補としてMAPファミリーのタンパク質に着目した。研究代表者は,予備的実験として,これらMAPファミリーの分子が転移性がん細胞株で発現しているか,また,転移性がん細胞株の浸潤能とその発現パターンに相関があるかをイムノブロッティングにより解析した。その結果,解析した一つのMAPタンパク質は転移性がん細胞でのみ高い発現が認められた。浸潤性乳がん細胞株におけるこの発現パターンはがん浸潤の主要因子であるMT1-MMPと良く類似しており,このタンパク質が浸潤突起形成およびがんの浸潤に関与することを強く示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに転移性がん細胞で高発現するMAPタンパク質を同定し、その発現分布について解析を進めることができたので。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらに多くの転移性がん細胞株およびヒト組織由来のがん細胞株について浸潤能とMAPタンパク質の発現量の相関を解析する。同時に,マイクロアレイ発現データベースを用いてがん患者の予後とMAPタンパク質の発現レベルの相関についても解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入等により生じた端数、10円を次年度に繰り越す。 当該の10円は次年度経費とともに適正に使用予定である。
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