ミトコンドリアはエネルギー生産に重要なオルガネラであり、その機能維持にはミトコンドリアダイナミクスというミトコンドリア膜の分裂と融合による形態変化が深く関わっていることが分かってきた。また申請者らのこれまでの研究成果から、膜のダイナミクスだけではなく、ミトコンドリアが保持する独自のDNAであるミトコンドリアDNA(mtDNA)の動的な制御もミトコンドリア機能維持に重要な役割を果たしていることが分かってきた。mtDNAは複数コピーがmtDNA結合タンパク質として知られているTFAMなどと複合体を形成して機能していると考えられている。しかし、mtDNAダイナミクスを制御する因子の情報が乏しいことから、本申請研究では、mtDNAの動態制御に関わる因子の探索とその分子メカニズムの解析から、呼吸機能だけでなく多様なミトコンドリア機能との関わりについて明らかにすることを目的としている。今年度は研究課題の完遂のために、問題となっていたmtDNAの観察システムの確立に向けて、研究を進展させた。具体的には核様体を顕微鏡下で可視化することが可能なプローブができ、これまでの試薬よりもシグナルの減弱が抑えられ、核様体の動きを長時間観察することを可能にした。さらに、前年度より進めていたmtDNAダイナミクスを制御する因子の同定とその分子メカニズムの解析をさらに進め、膜結合ドメインを持つMARCHユビキチンリガーゼファミリーに属するいくつかのタンパク質を発現抑制することによって、核様体が巨大化することが分かった。本研究から核様体の制御に関わる分子の一端を明らかにすることができ、研究成果として発表した(Ishihara T. and Kanon H. et al. Biochim Biophys Acta Gen Subj. 2021)。
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