研究課題/領域番号 |
18K06142
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中島 啓介 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, スタッフサイエンティスト (10422924)
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研究分担者 |
今井 友也 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (90509142)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セルロース / セルロース合成酵素 / インビトロ合成 / ホヤ / カタユウレイボヤ |
研究実績の概要 |
カタユウレイボヤ胚から調製した膜タンパク質画分を用いて、C14標識したUDP-グルコースの取り込み活性を液体シンチレーションを用いて評価した。取り込み反応後のセルラーゼ処理の有無で生じる取り込み活性の差分をセルロース合成活性とし、その活性の至適条件(pH・温度・2価金属イオン種および濃度)を求めた。至適条件でのインビトロ合成産物をフーリエ変換赤外分光法および電子線回折に供して、それがセルロースであることを確かめた。しかし、分析結果は、インビトロ合成されたセルロースが想定された平行鎖構造ではなく、逆平行鎖構造であることを示していた。カタユウレイボヤを含め、自然界で合成されたセルロースは平行鎖構造をとることから、本合成系には平行鎖構造をとるために必要な因子が何か欠けていると受け止めた。その因子を探るべく、様々な条件でのインビトロ合成を試み、その産物の分析と検討を行ったが、未だ因子は不明である。そこで、平行鎖合成の試みは今後の主たる課題の1つとして留めおき、急がば回れの精神で、本インビトロ合成系におけるセルロース合成酵素の評価を行った。まず、昨年度明らかにしたリン酸化が起きていることを確認した。ついで、ブルーネイティブ電気泳動法により、セルロース合成酵素がタンパク複合体を形成していること、その分子量が3量体から4量体に相当することを明らかにした。同複合体の構成要素を明らかにすべく、ゲルから抽出したタンパク質を液体クロマトグラフィータンデム質量分析に供して分析中である。このように、昨年までに確立させた独自の技術系を活用して、新たな課題を設定しつつ、着実にカタユウレイボヤのセルロース生合成機構について理解を深められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間中に確立させた実験系(ホヤ試料からの膜タンパク質精製系・RI取り込み活性評価系)を安定的に運用・活用し、着実に新知見を得るとともに、新たな課題を具体的な問題設定に落とし込み、新技術の導入により、セルロース合成酵素複合体に関する新しい知見が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
インビトロ合成系において、天然セルロース同様の平行鎖が合成されない因子を探ることで、生合成ならではの階層構造形成の秘密を明らかにできると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる業務遂行へのネガティブな影響を考慮し、一年間の延長が必要となったため、その予算が生じた。
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