研究課題
本研究では、蛋白質の結合なしにインスレーター(Ins)活性を示す配列に着目し、これらの配列がDNAの力学的変形を調節する弾性調節型Insとして機能するのか検証することを目的としている。2020年度は、前年度に引き続きGFP遺伝子と1つのエンハンサーを含む約7 kbpのDNA試料(試料1)と試料1の一部をArsIns (578 bp)に置き換えた試料(試料2)を用いて、1分子DNAのねじれ応答(DNAをねじった回数と末端間距離の関係)の観測を行った。その結果、試料1と試料2のねじれ曲線の概形に明確な違いが生じることが分かった。さらに、ArsInsを含む場合(試料2)、試料2に特徴的な概形に加えて、試料1に特徴的な概形も出現する場合があることが分かった。これらの結果は、1)局所的な配列の違いによりDNAのマクロな構造に違いが生じること、2)ArsIns配列がマクロな構造をスイッチさせる機能を持つ可能性があることを示している。ArsInsのエンハンサー遮断活性について詳細に解析したところ、ArsInsの周囲の配列の特性によって活性が大きく変化することが示された。これは、ArsInsが周囲の領域を介して作用することを示唆している。また、試料2のうちのArsIns (578 bp)とその上流下流 900 bp を含む領域部分と、試料1の対応する領域部分に対し、基準振動解析によりそれらの運動性を評価・比較した。その結果、試料1に比べ試料2 では伸縮や曲げの揺らぎが顕著に小さくなることが見出され、外部操作に対する頑強性が示唆された。本研究で得られた知見は,DNAの塩基配列が蛋白質の設計情報や結合情報だけでなく,DNA自身のマクロな構造を調節する機能を持つことを示唆する結果といえる。
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