研究課題/領域番号 |
18K06156
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
日野 智也 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (40373360)
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研究分担者 |
西澤 知宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80599077)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | TRPチャネル / X線結晶構造解析 / クライオ電顕 / 膜タンパク質 |
研究実績の概要 |
TRPチャネルは、ヒトの外部環境感知において主要な役割を担うカチオン選択的イオンチャネルであり、侵害刺激物質などの化学刺激だけでなく環境温度変化・浸透圧・機械刺激などの物理刺激にも応答する多刺激受容体として機能する。これまでに、複数種のTRPチャネルがクライオ電子顕微鏡により立体構造決定され、化学刺激による活性化機構の理解は大きく進展したが、一方で物理刺激に対する応答機構については、刺激受容部位、活性化機構など不明な点が多く残されている。そこで本研究では、物理刺激の中でも活性化の制御が容易な温度刺激の受容機構に焦点を絞り、X線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡単粒子解析により、温度刺激受容後の構造変化を可視化することでTRPチャネルによる温度受容機構の解明を目指している。 本年度は、活性化温度閾値が制御容易な30℃近辺であるTRPV3とTRPV4を対象とし、これらを結晶化及び電顕解析するための精製試料調製を試みた。酵母発現系による大量発現後、抗GFP抗体を用いたアフィニティ精製を行うことで、TRPV3及びTRPV4いずれにおいても高純度な試料を調製することができた。 TRPV3については、電顕観察に適したナノディスク化への再構成を高い効率で実施可能な条件を決定した。また、アフィニティ精製時の洗浄に用いる緩衝液の体積を増加させることにより、濃縮時に起こる凝集形成量が変化することを見出し、高濃度でも凝集を形成しない精製条件を確立できた。その結果、キットを用いたスクリーニングで再現性よく微小決勝が得られる条件を見出すことができた。 TRPV4については、結晶化に適したN末端及びC末端の欠損変異体作成の検討を行ったところ、C末端側のランダムコイル領域の欠損変異により、加温による4量体の解離が促進することがわかり、4量体形成におけるC末端領域の役割に関する示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TRPV3, TRPV4の試料調製については順調であったが、TRPV3のナノディスク化条件検討に時間を要したため、当初の予定より構造決定に遅れが生じている。TRPV3の結晶化については、スクリーニングの段階ではあるが、微小結晶の形成が確認できたため、ほぼ予定通りの進捗と言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年、TRPV3とTRPV4の高分解能立体構造が複数の研究室より報告された。これらの論文ではリガンド結合によるイオンチャネルの開閉制御機構が提唱されたが、イノシトールリン脂質や温度による開閉制御機構については明らかにされていない。そこで、今後はTRPV3やTRPV4のイノシトールリン脂質結合型、あるいは非結合型の立体構造をクライオ電顕やX線結晶構造解析での決定しその制御機構を解明する。また、TRPV3の結晶化条件の最適化やTRPV4の結晶化を進め、熱負荷後の構造変化についてX線結晶構造解析手法によるメカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
結晶化に使用するプラスチック器具などをキャンペーン価格で購入したため、計画に対し若干の差額が生じたため。 次年度には結晶化実験を多く行うことを予定しているため、そのための消耗品購入に充てる。
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