研究課題/領域番号 |
18K06157
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
井出 徹 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (60231148)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 1分子計測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は1分子蛍光計測と単一チャネル電流記録を同時に可能とすることである。前年度までの研究成果をもとに、引き続き要素技術の改良と装置全体の整合を行った。 i)光学系(単一チャネル電流記録法と金属増強蛍光計測の融合):前年度までに開発した1分子観察用蛍光顕微鏡を改良、汎用性を高め、目的であるアセチルコリン受容体チャネルの計測に最適化した。 ii)プローブ(電極):本研究では、金属電極表面に固定したチャネル蛋白を直接人工膜に挿入する新しい電流計測法を用いている。昨年度に引き続き、試行錯誤しながら電極先端の形状等の作製条件を改良した。昨年度までは、先端が鋭利な金線、市販の金属ナノ粒子(金ナノロッド等)を蛍光増強に利用してきたが、使用可能な蛍光励起波長帯を広げるため銀電極の使用を検討した。電解研磨法の溶液・電流条件を検討することによって先端の曲率半径が100nm以下の金・銀電極を再現良く作製することが可能となった。また、実験に使用する人工膜の安定性を高めるため、電極表面の修飾法についても検討した。電極表面を疎水性分子で修飾することにより人工膜を著しく安定化させることに成功した。 さらに副次的な成果として、上記の電流計測法を用いたイオンチャネル蛋白の高効率測定装置の開発も手がけた。金属、あるいは親水性ゲル表面に固定したチャネル蛋白を透過するイオン性電流を高効率で測定する自動計測装置の開発に成功した。これについては前年度既に報告済であるが、装置を改良し、より高効率化することに成功した。これらの測定装置を用いて、土壌細菌によるタンパク毒(Bacillus thuringiensisによるCryToxin)がイオンチャネルを形成することを発見し、それらのチャネル活性の解析も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症流行によって目的タンパクの精製が大幅に遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
チャネル-リガンド相互作用の1分子計測実験を行う。次年度後半以降にはアセチルコリン受容体チャネルとリガンドとの相互作用を1分子計測し、蛋白の状態遷移モデルを提案する。 1)チャネル-リガンド相互作用の計測:初めにモデル系として溶血毒(aHL)と蛍光標識阻害剤との相互作用を1分子イメージングすることを試みる(計測中)。これによって実験条件を最適化し、次に作製中の蛍光性リガンドとAChRチャネルの相互作用を1分子同時計測する。リガンド結合のタイミング、個数等に関する詳細な情報を得る。2)詳細な状態遷移モデルの検討:AChRチャネルは、最も詳細に分子メカニズムが調べられているチャネルの一つで、これまでの電気生理学、構造解析等から、詳細(複雑)な状態遷移モデルが複数提案されている。上記の計測結果をもとに、これらのモデルを検討し、新たな遷移モデルを提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 感染症流行によって目的タンパクの精製が大幅に遅れ、本年度の計画を次年度に繰り越したため。 使用計画:アセチルコリン受容体チャネルの発現・精製に関わる細胞・試薬の購入、および電極等消耗品の購入を計画している。
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