研究課題/領域番号 |
18K06158
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
梅名 泰史 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特別契約職員(准教授) (10468267)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光合成 / 蛋白質結晶 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
光化学系II蛋白質(PSII)の水分解反応には、活性中心にMn4Caクラスターから7オングストロームほどの近傍に反応に必須な塩素イオンが2箇所存在している。塩素イオンの役割については、生化学実験などから重要性は知られているが、具体的な構造化学的な機能についてはまだはっきりしていなかった。本研究では、塩素イオンの役割を解明するため、阻害作用を示す分子陰イオンへ置換したPSIIの構造解析から、塩素イオンが担っている構造化学的な機能を明らかにする。 本年度は、分子陰イオンのアジ化物イオンおよび硝酸イオンの置換体PSIIの結晶化と回折強度データの収集を行った。先行研究から、これら2つの分子陰イオンは塩素イオンから置き換わり、活性を低下させることが報告されており、置換体の構造変化から塩素イオンが担っている構造的な役割の解明につながると期待される。回折強度測定の結果、2.0オングストローム分解能の構造解析が行えることがわかった。また、異常分散項の電子密度マップ解析から、塩素イオンが置換により無くなっていることも確認できた。2箇所の塩素イオン結合サイトの塩素イオンの消失は確認できたが、CL-2サイトの置換による構造がはっきりしておらず、CL-1サイトの方は構造がはっきりしていた。現在、立体構造解析を行っており、それぞれの分子陰イオンの結合様式を確認している。また、構造変化がいくつか見つかっており、今後、構造解析を精密に進めることで、分子陰イオンに共通した阻害機構を解明し、塩素イオンの役割について理解が得られると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象のPSIIに結合した塩素イオンを分子陰イオンに置換した結晶構造解析に成功しており、構造変化から塩素イオンの役割の解明に繋がると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
塩素イオンを分子陰イオンに置換した結晶構造解析に成功したが、分子陰イオン濃度に依存した構造変化についても検証を進めて、置換による構造変化がどのように進行しているのか明らかにする。また、他の分子陰イオン(酢酸イオン、亜硝酸イオン)についても検討を進める。酢酸イオンは阻害活性が高く、また亜硝酸イオンは硝酸イオンと似た構造であるが、硝酸イオンよりも阻害活性が高いことが報告されているため、分子陰イオンの構造と阻害についての理解を深める研究を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が当初の想定よりも順調に進行したため、試料調製に必要と考えていた薬品や少額実験器具類の調達が不要になったため 、次年度に繰り越し構造解析や成果発表および論文校閲に使用することに変更した。
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