研究課題
本研究課題では、細胞性粘菌の走化性シグナル伝達機構をモデルとして、分子生物学的手法と光遺伝学および生物物理学的手法により、真核生物の走化性シグナル伝達における膜電位の役割を明らかにすることを目的とした。これまでにシグナル伝達に伴った膜電位変化において複数のイオン流が関わっていることがわかっており、イオンそれぞれの選択的な働きを解明することを目指した。昨年度までの研究において、細胞性粘菌の発生ステージの遷移に伴って、細胞性粘菌の主要なシグナルの1つであるcAMPのシグナル伝達機構への寄与度が大きく変化することを明らかにしている。また、高感度なカルシウムイメージング手法を導入することにより、細胞性粘菌の単細胞期から多細胞期に至るまで、機械刺激応答のシグナル伝達にカルシウムイオンが大きく働いていることを明らかにしている。本年度の研究において、分子遺伝学的アプローチにより、機械刺激に関わる複数のカルシウムシグナル経路を特定した。ここで働く経路の大部分は、ヒト細胞を含む哺乳類細胞でも保存されている分子機構であり、メカノセンシング研究に大きく貢献する知見を得ることができた。さらに、細胞質pHの高感度イメージング技術の開発により、細胞性粘菌の分化および脱分化における細胞内pH変化を検出することに成功した。これは脱分化過程をpHを指標として可視化した世界で初めての研究成果である。本研究で確立したイメージング技術は、細胞性粘菌の研究だけでなく、原核生物から真核生物に至るまでの幅広い研究に応用できるものである。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
Subcellular Biochemistry
巻: 96 ページ: 297-321
10.1007/978-3-030-58971-4_8.
Communications Biology
巻: 4 ページ: 335
10.1038/s42003-021-01865-0.
Biomolecules
巻: 10 ページ: 1255
10.3390/biom10091255.
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 15887
10.1038/s41598-020-72429-1.