細胞は、重力や外力のみならず体内の骨格筋や平滑筋の動きに起因する様々な機械的刺激に晒され、これら力学刺激を受容して細胞内骨格の形態変化などさまざまな応答を示す。生体膜や細胞骨格は外部からの力が働き、細胞の成長、分裂、形態変化、運動に伴って変化して、細胞応答を修飾するこのように力受容は生命科学において重要な地位を締めているが力の受容を行っている分子機構のほとんどは未解明の状態である。その最大の理由は、機械刺激の感知機構、言い換えるとメカノセンサーの分子実体が多くの場合同定されておらず、さらにメカノセンサーが細胞の構造や機能に影響をあたえる仕組みの多くが不明な点にある。本研究では蛍光分子と偏光イメージング顕微鏡でアクチン線維が備えている力学受容の仕組みを解明する。これまでの張力受容する分子の研究では力によって張力受容分子の形が単に歪むことが力学受容機構であると想定されてきた。本研究では分子の自発的なゆらぎの振幅などの減少が力学受容の分子機構であるとする点で独創的である。アクチン線維を独自の偏光顕微鏡の観察面に緩やかに固定して観察する。アクチン線維に結合した磁気ビーズを電磁石により牽引することで、アクチン線維に張力を発生させた。量子ドットの明るさ変化の分析を行うと、アクチン線維は、ねじれ角(α)の揺らぎと局所的な曲げ(β)の揺らぎが同時に見られ、力付加により、ねじれと曲げの揺らぎが同時に抑制された。これは張力上昇によりねじれ揺らぎの減少があることを示すだけでなく、理論的に予想された、ねじれと曲げの分子レベルでのカップリングを実験的に明らかにすることができた。
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