研究課題/領域番号 |
18K06168
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研究機関 | 光産業創成大学院大学 |
研究代表者 |
平野 美奈子 光産業創成大学院大学, 光産業創成研究科, 講師 (80585167)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オプトジェネティクス / イオンチャネル / 光感受性タンパク質 |
研究実績の概要 |
本研究では、非侵襲な光での細胞内イオン環境制御による細胞機能の操作を目指して、光照射で活性が制御される新規光感受性イオンチャネルを創製することを目的としている。本年度は、新規光感受性イオンチャネルの構成要素である光感受性タンパク質の一種(PAC)の光依存的な構造変化の詳細を捉える系の確立と、光感受性チャネルの候補となる変異体の光照射に依存したチャネル活性を簡便に計測する系を開発した。下記に詳細を示す。 1. 光刺激によってATPからcAMPを生産するタンパク質であるPACの二量体間の構造変化を、多分子レベルと1分子レベルで捉える系を確立した。前年度、多分子系で環境依存的な蛍光色素を利用して構造変化を捉えた部位の特定の単一アミノ酸を、それぞれ蛍光色素Cy3(ドナー)あるいはCy5(アクセプター)で標識した二量体PACを作製した。蛍光分光測定により作製した蛍光標識PACでFRETが起こることを確認し、さらに全反射顕微鏡を用いた1分子イメージングにより、FRETが1分子レベルでも起こっていることを確認した。今後光照射あり・なしでのFRETを計測することで、光感受性チャネルの光依存的な開閉の動力となりうるPACの部位を発見できるであろう。 2. 作製した光感受性チャネルの候補変異体の光依存的な活性を簡便に調べる方法を確立した。これまで、脂質平面膜法という電気生理学的手法な手法で候補変異体のチャネル活性を調べていたが、測定が煩雑で測定効率が非常に低かった。本年度は、近年開発したプロープ操作のみでチャネル活性が簡便に測定できる方法に光照射系を組み合わせた系を開発した。この測定系により、候補変異体の活性を従来法より100倍以上高い効率で測定することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により、光感受性イオンチャネルの構成要素である光感受性タンパク質PACの構造変化を可視化し、詳細な構造変化の情報を得る系が確立されている。今後PACの構造変化の詳細な情報を得ることにより、イオンチャネル構造変化を引き起こすことが可能なPACの部位が見つかり、新たな光感受性チャネルの設計が進むことが期待される。 また、光感受性チャネル候補変異体の光依存性を効率よく測定する方法を確立できた。これにより、候補変異体のスクリーニングが効率よく進むであろう。さらに、光感受性チャネル候補変異体の細胞での活性をアフリカツメガエルの卵母細胞を用いて捉える系をすでに確立しているので、候補変異体の細胞での光依存的なチャネル活性能も迅速に評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、PACの光依存的な構造変化の詳細を明らかにすることで、光依存的に構造変化する部位をいくつか見つけ出し、その部位とイオンチャネルの活性制御部位を結合した変異体を作製する。開発した簡便なチャネル活性測定装置で、作製した変異体の光依存的なチャネル活性を調べ、光依存的に活性が変化する変異体を選び出す。その後、その変異体を卵母細胞に発現させ、細胞内での光依存的なチャネル活性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を推進中に研究の鍵となる光感受性タンパク質の新たな性質と構造変化の情報が明らかになったため、この情報をもとに最終的に創製する予定の光感受性イオンチャネルの設計を検討し直す必要があったため。
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