研究実績の概要 |
多くのタンパク質で見られる多量体形成は、タンパク質の活性制御などに重要な役割を果たす。代表研究者は非六量体型スーパーファミリー1ヘリカーゼUvrD が多量体を形成してDNAを効率的に巻き戻すことを明らかにした。しかし、2分子目のUvrDのDNAへの結合がどのようにDNA巻き戻しをトリガーするのか、多量体を構成する個々のUvrDがATP加水分解エネルギーをどのように使ってDNA巻き戻しをしているのかの詳細は不明である。 そこで本研究ではUvrD のDNA上での多量体形成・DNA巻き戻し機能・ATP加水分解エネルギーの化学力学共役機構の相関関係を蛍光1分子イメージングすることで明らかにすることを目指している。 2020年度は、多量体を形成できないとされるC末端40アミノ酸欠損変異体(UvrDΔ40C)が定説に反し、二量体あるいは三量体でDNAを巻き戻していることを出版した(Biophysical Journal 118, 1634~1648 (2020))。またこの論文に関連した邦文の総説を執筆し受理された(生物物理, 印刷中)ほか、非六量体型ヘリカーゼのC末端アミノ酸と機能に関する総説を出版した(International Journal of Molecular Sciences 22, 1018 (2021)。さらに、蛍光1分子直視によって40アミノ酸より多くのC末端アミノ酸を欠失した変異体でさえ、なお複数分子でDNAを巻き戻していることを見いだした。そのほか、野生型より高いDNA巻き戻し活性をもつ変異体の蛍光1分子直視データの解析、ゼロモード導波路による高濃度蛍光性ATP条件下の蛍光1分子イメージング、DNA巻き戻しの1塩基分解能観察に取り組んだ。また、蛍光顕微鏡に用いられる微弱光検出器に関する総説(Applied Sciences 11, 2773 (2021))も出版した。
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