研究課題/領域番号 |
18K06170
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
津下 英明 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40299342)
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研究分担者 |
吉田 徹 京都産業大学, 総合生命科学部, 研究助教 (30724546)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 二成分毒素 / 膜孔 / トランスロコン / クライオ電子顕微鏡 / 複合体構造解析 / ADPリボシルトランスフェラーゼ |
研究実績の概要 |
ウェルシュ菌イオタ毒素は二成分毒素であり、宿主細胞内でアクチンのADPリボシル化を行う酵素ユニットIaと酵素成分を細胞内に輸送するトランスロコンIbからなる。Ibは約500KDaのオリゴマーを形成しプレ膜孔を形成、さらに大きな構造変化をおこし膜に結合、膜上で機能的な膜孔を形成すると考えられる。エンドソームの酸性条件下でこの膜孔を介したIa の細胞内への透過が起こると考えられている。しかしながら、プレ膜孔、膜孔ともにその構造は分かっておらず、またIaの膜透過機構は全くわかっていない。この申請では、二成分毒素の機能発現の理解のため、Ibのプレ膜孔、膜孔の構造解析およびIaの結合したプレ膜孔、膜孔の構造解析を目的としている。相同な炭疽菌毒素のPA膜孔ではプレ膜孔に比べ安定な膜孔サンプル調製が難しかったが、その構造は2015年にクライオ電子顕微鏡による原子分解能の単粒子解析により明らかになっている(Jiang et al. Nature 2015)。我々はIbにおいてオリゴマーを形成させる条件の検討から入り、安定な膜孔形成の条件を見出した。この膜孔サンプルを用いて、Titan Kriosを用いたデータ収集、およびRELION(MRC)を用いた解析を行い、原子分解能の構造を明らかにした。膜孔シスサイドには3つの狭窄部位を持つ漏斗型の構造を持ち、最も狭い狭窄部位は7つのPheから構成される(φクランプと呼ばれる)。このφクランプの構造はPAと同じく維持されており、ADPリボシルトランスフェラーゼであるIaの透過に重要な役目をしていると考えられる。現在、次の目的である、IaとIb膜孔複合体の構造解析へ向けて研究を進めている。また、クライオ電子顕微鏡で揺らいでいることがわかったドメイン4については結晶解析を進めるべく準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Ib膜孔の構造解析は、安定なサンプルを得る条件を見出したことにより、大きく進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
現在、2つ目の重要な目的である、IaとIb膜孔複合体の構造解析へ向けて研究を進めている。 いかに安定な複合体のサンプルを調整するかが、また複合体の比率を増やすかが、クライオ電子顕微鏡 での良いデータを取れるかの決めてとなると考えている。 また、クライオ電子顕微鏡で揺らいでいることがわかったドメイン4については結晶解析を進めるべく準備を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
Ibのオリゴマー化は簡単でなく、均一な良いサンプルが得られないため電子顕微鏡の良いデータの測定につながらなかった。 これを改善するために様々な工夫を行った。サンプルの性質の向上により非常に良いデータが得られるようになった。この結果、想定していた予定より非常に早く研究が進展し、使用額に変更が生じた。
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