研究課題/領域番号 |
18K06173
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
石田 恒 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 上席研究員(定常) (60360418)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヌクレオソーム / 分子動力学シミュレーション / DNA解離 |
研究実績の概要 |
クロマチンの基本単位であるヌクレオソームは、DNAとヒストン蛋白質の複合体で、遺伝子転写等の生命現象に関わる。ヌクレオソームは通常4種のコアヒストン(H2A, H2B, H3, H4) 各2つから構成されるオクタソームを構成し、オクタソームに巻き付いたDNAを外的要因から遮蔽する。その一方、転写活性状態ではヒストン化学修飾やヒストン構成変化により、転写関連タンパク質がDNA遺伝子情報にアクセスできるようになる。 本年度では、ねじれストレス作用下の条件のもと、コアヒストンに巻き付いたDNAをヒストンコアから解離する分子動力学シミュレーションを実行することで、ねじれストレスがどのようにDNA解離に影響を及ぼすのかを解析した。 初めに、申請者が主体的に開発した分子動力学シミュレーションプログラムSCUBA にDNAの両端に力をかける計算法を組み込み、DNAの両端を引っ張る力をかけながら、DNA解離を誘導した。自由エネルギー地形を得るための手法には、SCUBAに搭載したABMD自由エネルギー計算法を用いる。本研究のABMD法では、DNA末端間距離を反応座標に設定し、DNA解離の構造を反応座標上に大量かつ均等にサンプリングする。更に、DNAの両端に正のねじれストレス、負のねじれストレスを作用させた条件、ねじれストレスなしの条件(合計3つの条件)におけるアンブレラサンプリング法を用いた計算を実施することで、ねじれストレスがDNA解離に及ぼす影響を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、ほぼ計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、DNA解離における自由エネルギー地形を詳細に解析し、自由エネルギー地形上でのDNA解離構造変化を原子レベルで明らかにする。更に、ねじれストレスがオクタソームに巻き付いたDNAの解離の進行具合に大きな影響を与えることがわかったことから、DNA解離に大きな影響を与えるねじれストレスをより詳細に解析する。具体的には、解離したDNAの柔らかさの変化や、2つのDNA末端のDNA解離の非対称性などを解析することにより、DNAの物理的物性とDNA解離の関係を原子レベルで解析する。以上をもとに、ヌクレオソームの大規模構造変化メカニズムを明らかにし、その細胞核内でのDNA動態の意義を理解する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初、ヌクレオソーム内のDNA-ヒストン相互作用を定量的に解析のためのワークステーションの購入を検討していたが、定量的解析に必要となるサンプリングデータが当初より少なくて済むことが計算解析により予測できた。そのため今年度は、既存のワークステーションで解析を実施した。ただし、令和2年度においては、H31年度に出力された追加サンプリングデータを含めて、DNAの物理的物性とDNA解離の関係を解析するための大規模解析計算を実行する。そのため、大規模解析計算に必要な資源を追加購入する予定である。
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