研究課題/領域番号 |
18K06177
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
川村 哲規 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10466691)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Hox遺伝子群 / CRISPR-Cas9 / 多重変異体 / 遺伝子クラスター / 脊椎動物の前後軸 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
Hox遺伝子群の発見から四半世紀以上経った現在においても、その機能と制御機構については不明な点が多く残されている。その大きな理由として、Hox遺伝子群のゲノム上の構造と、それに伴う相補性の高さが挙げられる。ショウジョウバエでは、単一の染色体上に一列に並んだホメオティック遺伝子群はそれぞれ固有の機能を持ち、遺伝子と機能の相関が明確である。一方、脊椎動物においては、脊椎動物の進化の初期過程で生じた2回の全ゲノム重複により、ヒトやマウスでは4つのHoxクラスターが存在している。また、真骨魚類では4つのHoxクラスターがさらに倍加し8つのクラスターを生じた後、ゼブラフィッシュではhoxdbクラスターが消失して計7つのクラスター構造を有している。さらに、単一のHoxクラスター内には10個程度のHox遺伝子が並び、個々のHox遺伝子はcis及びtransに相補しあい、その結果、遺伝子と機能の関係は非常に複雑である。このように高度に相補性を持つ脊椎動物のHoxクラスターの機能と制御の全容を解明するには、ゲノムレベルでHox遺伝子クラスターを捉えた解析が必須である。本研究では、胚発生が早く、遺伝学的解析に優れたゼブラフィッシュの利点を生かし、それぞれのHox遺伝子クラスターを破壊した欠損体をCRISPR-Cas9システムを用いて作製し、脊椎動物におけるHox遺伝子クラスターの役割を解明する。さらに、Hox遺伝子クラスターの多重変異体を作製し、その表現形解析を行うとともに各クラスターのゲノム構造を解析することにより、Hox遺伝子クラスター間の相互作用の意義を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の初年度となる平成30年度では、7つ存在するゼブラフィッシュのhoxクラスターについて、CRISPR-Cas9法を用いてhoxクラスターの両端を標的したgRNAを作製することで、クラスター全体を欠失した変異体を作製することを試みた。その結果、7つのクラスターのうち6つについて、目的の通り、クラスター全体を欠失した変異体の単離に成功した。残りの1つに関してはやや手間取ったが現在、単離中であり、全てのhoxクラスター変異体を単離できる目途が付いた。また、これまでに作製した幾つかのhoxクラスター変異体について、変異体同士の交配しホモ変異体を作製した。その結果、これまでにマウスなどで示されている中軸骨格の異常に関して、CTスキャンを用いた解析から、ゼブラフィッシュのhoxクラスター変異体においても異常が観察された。さらに、他のモデル動物では報告されていない新たな異常も見いだされてた。よって、本研究課題は当初の計画通り、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の2年目になる平成31年度では、前年度、単離に至っていない残り1つのhoxクラスターについて変異体を単離し、全てのhoxクラスター変異体の単離する。次に、作製したそれぞれのhoxクラスター変異体の表現形について、ゼブラフィッシュの各hoxクラスターの機能について記載できるように表現形を詳細に解析する。また、機能的もしくは構造的に相関が見られたクラスター変異体に着目して、二重変異体もしくは三重変異体を作製することで、多重ホモ変異体の表現形を明らかにし、その機能を明らかにしていくことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画がおおむね順調に進行した上に、物品等の購入時にキャンペーン対象商品を購入するなどにより安価な商品を購入した結果、予定した支出よりも少ない費用で本年度は行えた。次年度には、単離した変異体の詳細な解析を予定しており、それに必要な物品等を購入する費用として充てる予定である。
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