研究課題/領域番号 |
18K06179
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
北本 綾 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 技術専門職員 (30381627)
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研究分担者 |
北本 卓也 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 技術職員 (10456882)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肥満 / エピゲノム / 次世代シーケンサー / ターゲットバイサルファイトシーケンス / ゲノムワイド関連解析 |
研究実績の概要 |
ヒト白色脂肪前駆細胞(腹部の皮下脂肪、性別は女性)2ラインを脂肪前駆細胞増殖培地でコンフルエントになるまで増殖させ(①前駆細胞)、脂肪前駆細胞分化培地にて72時間培養し分化させた(②分化誘導後の細胞)。さらに脂肪細胞栄養培地にて培養し、③脂肪蓄積開始初期細胞、④脂肪蓄積細胞、⑤成熟脂肪細胞の5つの過程で細胞を取得した。各過程の細胞からゲノムDNA、総RNA、総脂質、中性脂肪を精製した。 分泌される中性脂肪の量の変化は、Adipogenesis Assay Kitを用いて測定した。Micro BCA protein assayによりタンパク質量を測定し、標準化を行い中性脂肪濃度を算出した。中性脂肪は、③脂肪蓄積開始初期細胞から増加し始め、⑤成熟脂肪細胞の中性脂肪濃度は、③脂肪蓄積開始初期細胞と比較すると約5倍であった。 各過程の細胞は、脂肪細胞蛍光染色キットを用いて脂肪球(BODIPY)と核(Hoechst 33342)を染色し、脂肪滴の蓄積はImage Jを用いて解析した。脂肪滴の量は、中性脂肪濃度と比例して増加していた。 また、ターゲットバイサルファイトシーケンスによる解析のために、GWAS Catalog(https://www.ebi.ac.uk/gwas/)を参照して肥満に関する形質と関連が報告されている感受性遺伝子のうち、P値が10E-20未満の遺伝子を対象として、上流に存在するCpG領域を全て含むように開発済のプログラムでプライマーを設計し、K562細胞(ヒト慢性骨髄性白血病)から抽出したゲノムDNAを用いてバイサルファイト処理を行い、PCRによる増幅の条件を検討した。皮下脂肪3ラインのゲノムDNAのバイサルファイト処理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、内臓脂肪由来のヒト白色脂肪前駆細胞の組織由来は大網・性別は女性に限定しており製品の購入にやや時間を要した。更に、皮下脂肪と比べると分化効率が悪く予想以上に脂肪滴の蓄積量は少なかったため、条件検討に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
皮下脂肪3ラインについては、対象遺伝子上流に存在するCpG領域を全て含むように特異的にPCR増幅を行う。MiSeqにより100 baseのPaired-endで高深度なランを実施する。出力データの解析は、主にフリーのNGS用解析ツールを用いた開発済みのパイプラインと、一部は独自開発のプログラムを組み合わせて行う。DNAのメチル化レベルに有意差がみられた全ての感受性遺伝子について、Total RNAを用いて定量的RT-PCR法により発現量を確認し、DNAメチル化と遺伝子発現量との関連を解析する。また、DNAメチル化レベルの変化による代謝物(脂質)の変動を解析する。各過程の細胞から脂質を精製し、Orbitrap質量分析計と脂質自動同定ソフトウェア(Lipid Search)を用いて網羅的に変動する脂質分子を同定する。 内臓脂肪に関しては条件が決定次第、細胞からゲノムDNAを抽出しバイサルファイト処理を行う。皮下脂肪と同様に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)内臓脂肪由来のヒト白色脂肪前駆細胞の場合、組織由来は大網、性別は女性の細胞に限定している。細胞の入荷が遅れたため、2019年度中に予定した細胞ラインの購入に至らず、予定していた経費を2020年度に持ち越すことになった。
(使用計画)2020年度中に内臓脂肪2ラインを購入する。各過程の細胞からゲノムDNA、総RNA、総脂質、中性脂肪を精製する。
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