研究課題/領域番号 |
18K06179
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
北本 綾 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 技術専門職員 (30381627)
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研究分担者 |
北本 卓也 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 技術職員 (10456882)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肥満 / エピゲノム / 次世代シーケンサー / ターゲットバイサルファイトシーケンス / ゲノムワイド関連解析 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
肥満感受性遺伝子領域を対象としたDNAメチル化と肥満の発症・進行との関連性を検討するため、ヒト白色脂肪前駆細胞を用いて肥満に関する形質と関連が報告されている遺伝子を対象として、上流に存在するCpG領域を次世代シーケンサーMiSeq(ターゲットバイサルファイトシーケンス)にて解析した。肥満感受性遺伝子は、GWAS Catalog(https://www.ebi.ac.uk/gwas/)を参照してP値が10E-20未満の遺伝子を対象とした。特定のCpG領域についてメチル化レベルに有意な差がみられ、皮下脂肪細胞の分化段階で異なる事を見出した。 感受性遺伝子に着目したメチル化解析と遺伝子発現解析、さらにリピドーム解析の統合による新たな解析法を確立するため、脂質の抽出方法を検討した。 リピドーム解析は、総脂質をBligh and Dyer法で抽出し、Orbitrap質量分析計と脂質自動同定ソフトウェア(Lipid Search)を用いて網羅的に変動する脂質種を同定した。MetaboAnalystソフトウェア(https://www.metaboanalyst.ca/home.xhtml)で解析を行い、多くの脂質種を同定することに成功した。 その結果、脂肪蓄積が進むにつれ、様々な脂質種の蓄積レベルが変動することを詳細に明らかにすることができた。解析結果については論文に投稿した。 さらに脂質の抽出工程で、低分子(核酸、糖類、アミノ酸など)についても抽出する方法を確立した(メタボロミクス解析)。脂肪細胞の分化段階をメチル化解析・遺伝子発現解析・リピドーム解析・メタボロミクス解析し、結果を統合することで、肥満の進行メカニズムの解明に役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ターゲットバイサルファイトシーケンスを行い、特定のCpG領域についてメチル化レベルに有意な差がみられ、皮下脂肪細胞の分化段階で異なる事を見出したが、Total RNAを用いた定量的RT-PCR法で標的遺伝子の発現量を確認したところ、発現量が低く安定した結果が得られなかった。 しかし、当初計画していた脂質分子の網羅的な解析は順調に進んでおり、論文投稿に進むことができたため、全体的には概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
DNAメチル化と遺伝子発現量の解析は、デジタルPCRにより解析する。さらに、各過程の細胞から抽出した低分子(核酸、糖類、アミノ酸など)について、UltiMate 3000 HPLC-Q Exactive 四重極-Orbitrap質量分析計により分析する。網羅的低分子解析ソフトウェア (Compound Discoverer 3.0) で解析することにより、脂肪細胞の分化、成熟までの各段階において変動する代謝物を同定する。 研究成果の公表については、学会発表する準備を進め、学術論文としても公表できるよう研究成果をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウィルス感染症の影響による研究試薬の納品に遅延があり、計画していた実験を実施出来なかった。予定していた経費を2022年度に持ち越すことになった。
(使用計画)ターゲットバイサルファイトシーケンスで得られた結果を元に、DNAメチル化と遺伝子発現量との関連をデジタルPCRで解析する。また、新たに抽出方法を確立した低分子(核酸、糖類、アミノ酸など)についても網羅的に解析する。
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