研究実績の概要 |
肥満感受性遺伝子領域を対象としたDNAメチル化と肥満の発症・進行との関連性を検討するため、ヒト白色脂肪前駆細胞を用いて肥満に関する形質と関連が報告されている遺伝子を対象として、上流に存在するCpG領域を次世代シーケンサーMiSeqにて解析した。肥満感受性遺伝子は、GWAS Catalogに登録されている4つのGWAS研究を参照して、P値が10E-20未満の7遺伝子を対象とした。7遺伝子の発現調節領域に存在する10ヶ所のCpG、CHG、CHH領域のメチル化レベルを測定した。特定のCpG領域についてメチル化レベルに有意な差がみられ、皮下脂肪細胞の分化・成熟段階で異なる事を見出した。 感受性遺伝子に着目したメチル化解析とプロテオーム解析、さらにリピドーム解析の統合による新たな解析法を確立するため、リピドーム解析とプロテオーム解析を行った。 リピドーム解析は、総脂質をBligh and Dyer法で抽出し、Orbitrap質量分析計と脂質のハイスループット自動同定ソフトウェア(Lipid Search)を用いて網羅的に変動する脂質種を同定した。解析はMetaboAnalystソフトウェアで行い、LipidSearchで同定した309種類の脂質のうち145種類の脂質に、分化・成熟段階で統計的に有意な変化がみられた。 さらにプロテオーム解析では、同じ細胞からタンパク質を抽出し、酵素処理後、Orbitrap質量分析計とタンパク質解析ソフトウェア(Proteome Discoverer)を用いて網羅的に変動するタンパク質を同定した。その結果、1,871個のタンパク質が同定され、そのうち381個は分化・成熟段階で統計的に有意であった。それぞれの解析結果は、ヒト白色脂肪細胞(皮下脂肪)の分化・成熟に伴う脂質及びタンパク質のプロファイルの変化として、論文に報告した。
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