研究課題/領域番号 |
18K06183
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中山 祐二 鳥取大学, 研究推進機構, 助教 (40432603)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脆弱X症候群 / ゲノム編集 / 染色体脆弱部位 / 人工染色体 |
研究実績の概要 |
家族性の知的障害である脆弱X症候群(以下、FXS:Fragile X syndrome)はトリプレットリピート病に分類される。罹患者は自閉症症状を併発することが多いため、難治性疾患であるFXSの病態・病因の解明は、神経変性疾患の機能解明ならびに治療の開発のためにも重要な位置付けにある。FXSの責任遺伝子であるFMR1(FMPR Translational Regulator 1)の5’非翻訳(UTR)領域に存在するCGGリピートは、正常、保因者、患者と長さが異なり、特に保因者の持つ100リピート程度を中心とした中程度のCGGリピートが母性伝播すると一気に200リピート以上にまで伸長し、FMR1プロモーターおよびCGGリピート周辺領域の高度のメチル化の後、FMR1遺伝子の発現を抑制する。これらのゲノム、あるいはエピゲノム変化を再現するためには、単にリピート領域だけでなく、それを制御するためには周辺の広いゲノム領域が関与していることが示唆されている。 本研究ではFXS発症の根本的病因であるこれらの一連のクロマチン動態を再現し解析するために、CGGリピート配列をコアとするFXS脆弱部位を機能的ヒト染色体領域として人工染色体上にクローニングし真のFXS細胞モデルを構築することを目指している。前年度に引き続き、FXS保因者由来のヒトX染色体を保持するCHO細胞内において、FXS脆弱部位を保持する人工染色体の構築のために必要なヒトX染色体の改変を続け、今年度は全ての過程を完了することができた。人工染色体への脆弱部位の搭載のステップに進むことができる資材が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度から今に至るまでゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9系を用いてヒトX染色体の改変を進めてきて、ヒトX染色体の必要な改変が全て終了したことは一区切りとして良い成果となった。しかし、人工染色体の構築までを目的とした本研究の計画からは遅れたままとなった。FMR1上流領域はgene poorであり配列がリピート様の領域がほとんどである。そのため、挿入するloxP配列や人工テロメアを持つターゲットベクターを構築することに時間を要した。さらにそれらのゲノムへの挿入および編集の効率が予想以上に低頻度であった。これらの要因から、ゲノム編集技術によるX染色体の改変には想定以上に時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、FMR1遺伝子座に加えて、その上流領域と下流領域、全て合わせて約200kbの脆弱部位を人工染色体にクローニングする準備ができた。本研究はFXS脆弱部位を保持する人工染色体の構築を成功させなければ先に進むことができないので、引き続き、本資材を用いて、人工染色体の構築を進めていく。一方、2018年の報告で、「FMR1のCGGリピート動態を制御する染色体領域がもっと広い」という可能性が示された。これを受けて、本研究で得られた資材とは別に、脆弱部位としてクローニングする予定の領域を大きく(長く)したバージョンの作成も着手しているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を進めるための最初の出発材料であるヒトX染色体保持マウス細胞についての論文を仕上げる作業が長期になってしまったことと、また新型コロナウイルスの影響で大学院生が実験に従事できない期間が生じたことが重なり、最終年度は研究を十分に遂行できない期間が生じた。そのために、補助事業期間延長承認申請を提出し、承認された(2021年3月)。本研究内容は引き続き継続し、当初の使用計画の脆弱部位の人工染色体への搭載までを完了させることを目指す。
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