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2019 年度 実施状況報告書

造血におけるゼブラフィッシュDnmt3aa標的ゲノム領域と領域特異化因子の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K06185
研究機関広島大学

研究代表者

菊池 裕  広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (20286438)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードdnmt3a / DNAメチル化 / ゼブラフィッシュ
研究実績の概要

de novo DNAメチル基転移酵素Dnmt3aは、ゲノムDNAのメチル化修飾を介して遺伝子発現を制御している。私達は、哺乳類Dnmt3aの相同遺伝子であるゼブラフィッシュdnmt3aa遺伝子の母性胚性ノックアウト変異体(MZdnmt3aa-/-)を作製した結果、血管芽細胞は形成されるが、血管内皮細胞の低形成・血液細胞(一次・二次造血)の大幅な減少が観察された。本研究課題では、MZdnmt3aa-/-胚を用いた網羅的遺伝子発現解析・全ゲノムバイサルファイトシークエンス解析(WGBS)及びバイオインフォマティクス解析等により、Dnmt3aaの直接の標的であるゲノム領域の解明と領域特異性を決める因子の同定を研究目的としている。
本年度は、野生体と比較して変異体特異的にメチル化が減少した27ヶ所のゲノム領域(differentially methylated region: DMR、2kbp以上の領域に10個以上の異なるメチル化シトシンが含まれる領域)を解析した結果、転写開始点領域(3ヶ所)、遺伝子内領域(11ヶ所)、転写終結領域(4ヶ所)、遺伝子間領域(9ヶ所)に分類された事から、転写終結領域はDnmt3aaターゲットの一つである事が明らかになった。DNAメチル化とmRNA転写終結との関係を調べるため定量的PCRを行った結果、DNAメチル化が低下するとmRNA転写終結が阻害される事を明らかにした。更に、バイオインフォマティクス解析により、Dnmt3aをノックアウトしたマウス神経細胞においても、転写終結に異常を示す事を明らかにした。
以上の結果より、本研究ではWGBSによりゼブラフィッシュdnmt3aa特異的メチル化ゲノム領域として、転写終結領域がターゲットになっている事を見出し、DNAメチル化がmRNA転写終結に関与している事を世界で初めて明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、「MZdnmt3aa-/-変異体におけるメチル化減少領域の特定」と「DNAメチル化とmRNA転写終結の関連性」に関して解析を行い、以下の様な結果を得た。
1.MZdnmt3aa-/-変異体におけるメチル化減少領域の特定
WGBSにより、全ゲノムにおけるメチル化解析を行った結果、MZdnmt3aa-/-変異体において、DNAメチル化が野生体と比較して有意に減少したゲノム領域(Differentially Methylated Region, DMR: 2kbp)は27ヶ所である事が明らかになった。更に、この27ヶ所を詳細に調べた結果、転写開始点領域(3ヶ所)、遺伝子内領域(11ヶ所)、転写終結領域(4ヶ所)、遺伝子間領域(9ヶ所)に分類された事から、Dnmt3aaは転写終結領域をターゲットにしている事が明らかになった。更に、DNAメチル化と転写終結との関係を調べるため定量的PCRを行った結果、DNAメチル化が低下すると転写終結が阻害され、長いmRNAが合成される事を明らかにした。
2.Dnmt3aノックアウトマウス神経細胞におけるmRNA転写終結に関するバイオインフォマティクス解析
既に論文報告されている、Dnmt3aノックアウトマウス神経細胞におけるRNA-seqデータを解析した結果、Dnmt3aノックアウト細胞では転写終結点から数Kbp超えてmRNAが長く伸長している事を明らかにした。現在、DNAメチル化と転写終結との関連性に関して、継続してインフォマティクス解析を行っている段階である。

今後の研究の推進方策

来年度は、転写終結領域におけるDNAメチル化とmRNA転写終結との関係性を更に詳細に解明するため、以下の実験を推進する予定である。
1.転写終結領域におけるDNAメチル化とmRNA転写終結の解析:MZdnmt3aa-/-変異体において転写終結領域に観察された4ヶ所のDMRに関して、mRNAの長さをノーザンハイブリダイゼーションにより調べ、転写終結の異常を明らかにする。更に、転写終結領域のDNAメチル化とmRNA転写終結の関連性を網羅的に調べるため、野生体とMZdnmt3aa-/-変異体のRNA-seq解析を行い、転写終結の異常を全て明らかにする予定である。また、MZdnmt3aa-/-卵にヒトDNMT3A遺伝子を過剰発現させる事により、mRNA転写終結の異常がレスキューされるかを実験により確認する。
2.DNAメチル化と転写終結との関連性に関するインフォマティクス解析:複数の哺乳類の培養細胞を用いたDnmt3a遺伝子ノックアウト(或いはノックダウン)実験報告において、転写終結領域のDNAメチル化とmRNA転写終結の異常との関連性をRNA-seqデータより調べる。本インフォマティクス解析により、DNAメチル化とmRNA転写終結との相関性が、生物種の違いを超えた普遍的現象である事を明らかに出来ると考えられる。
3.MZdnmt3aa-/-胚における表現型の解析:MZdnmt3aa-/-胚において観察された、造血の表現型の違いを明らかにするため、各発生時期における血球遺伝子マーカー遺伝子の発現を詳細に調べ、造血のどの段階で違いが生じるのかを解明する予定である。

次年度使用額が生じた理由

実験動物を使った実験であるため、世代交代などの実験進行上の都合から、年度末・新年度にかけて物品費が多くなってしまったため、「次年度使用額」として残さざるを得なくなってしまった。しかし、次年度助成金と合わせて、年度末から新年度にかけて実験を行い、転写終結の異常を検出する物品費に集中して予算を使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Anticancer polymers designed for killing dormant prostate cancer cells.2019

    • 著者名/発表者名
      Takahashi, H., Yumoto, K., Yasuhara, K., Enrico T. Nadres, T.E., Kikuchi, Y., Taichman, R.S., and Kuroda, K.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: 1096-1106

    • DOI

      10.1038/s41598-019-53859-y.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 3次元in vitro培養系によるがん微小環境理解のための組織構成的アプローチ2019

    • 著者名/発表者名
      高橋 治子、菊池 裕
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] ゼブラフィッシュDnmt3aaが標的とするゲノム領域の同定2019

    • 著者名/発表者名
      白井 均樹、高橋 治子、高山 和也、下田 修義、菊池 裕
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] Comprehensive analysis of miRNAs in cancer stem-like cells2019

    • 著者名/発表者名
      Jie Huang, Haruko Takahashi, Mayuko Nishi, Akihide Ryo, Yutaka Kikuchi
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] Tumor invasion and progression are associated with cholinergic-nerves via nicotinic acetylcholine receptors2019

    • 著者名/発表者名
      Mohamed N. Bakr, Shunya Hozumi, Hiroya Katayama, Haruko Takahashi, Yukinari Haraoka, Tohru Ishitani, Yutaka Kikuchi
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会

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公開日: 2021-01-27  

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