研究課題/領域番号 |
18K06189
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 圭介 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 開発研究員 (80587452)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 成熟精子 / エピゲノム / miRNA / tsRNA |
研究実績の概要 |
今年度は、環境要因が成熟精子のmiRNA発現状態に与える影響について解析した。過去の解析から、雄マウスを低タンパク食で飼育すると、ATF7依存的に精巣細胞・精子細胞のエピゲノム変化が誘導され、これによって次世代個体の遺伝子発現プロファイルが変化することが分かっている。そこで、通常食・低タンパク食で飼育した野生型マウスから成熟精子細胞群であるHRCSを回収し、miRNA発現状態をSmall RNA-Seq法により解析したところ、Gly-GCCやHis-GTGなどのtRNA由来のsmall RNA(tsRNA:tRNA-derived small RNA)や一連のmiRNAの発現上昇が観察された。同様の解析をATF7ヘテロ変異体を用いて行うと、野生型とは異なる遺伝子群の発現変化が観察された一方で、上記のtsRNAについては野生型と同様の発現変化が観察された。次に、成熟精子の前駆細胞である精母細胞においてtsRNAの由来となる全長tRNAの発現状態について調べた。その結果、野生型では低タンパク処理によってtRNA:Gly-GCCやtRNA:His-GTGの発現量が上昇するのに対して、ATF7ヘテロ変異体では観察されなかった。また、これらtRNAを含む遺伝子領域のエピゲノム状態を解析すると、野生型では低タンパク食によってH3K9me2レベルが減少するのに対して、ATF7ヘテロ変異体では観察されなかった。以上の結果は、ATF7は低タンパク食によって精母細胞で誘導されるsmall RNAの発現量をエピゲノム変化を通じて制御していることを示唆している一方で、プロセッシングについてはRNaseやROSなどの因子が関与している可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定通り、環境要因による精巣ATF7結合変化を介した、成熟精子のエピゲノム・miRNA発現状態の変化が観察されたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果から、成熟精子HRCSのエピゲノム状態・small RNA発現プロファイルの解析法が確立できたので、他の環境要因の影響についても同様に解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に論文投稿費が発生し、費用が想定した額より多少少なかったため。
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