研究課題/領域番号 |
18K06190
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
竹本 訓彦 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (40546793)
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研究分担者 |
末次 正幸 立教大学, 理学部, 准教授 (00363341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミスマッチ修復 |
研究実績の概要 |
従来型ミスマッチ修復機構ではinsertionやdeletionを含む様々な種類のミスマッチを認識し、修復する事ができる。一方で我々はC. glutamicumのEndoMSがG/T,G/G,T/Tミスマッチのみを特異的に切断することを明らかにしていた。2017-2018年度にかけてC. glutamicumにおいて全ゲノムレベルでの変異を検出するMutation Accumulation Assayを行い、EndoMSの基質特異性がendoMS遺伝子破壊株で発生率が上昇する変異の種類とうまく合致することを示す結果を得た。これらの結果から、EndoMSは短いinsertionやdeletionのによるミスマッチを認識できないにもかかわらず、C. glutamicumでは短いinsertionやdeletionの発生率が従来型システムをもつ生物と大きく変わらないことが明らかとなった。これらの結果をまとめた論文をNucleic Acid Research誌に発表した。 細胞内で複製エラー・EndoMS依存的に二本鎖切断が行われているかを確認するため、EndoMSの発現をIPTG添加の有無により制御できるシステムを開発し、染色体上のendoMS遺伝子の位置と置き換えた株を作製した。同株ではIPTG添加の有無によりEndoMSの発現量を制御でき、変異率が変化することを確認している。 遺伝子のアノテーション情報をもとにEndoMSが切断した後に機能することが予想される18個の遺伝子の破壊株を作製し、変異率への影響を確認した。いずれの遺伝子破壊株でも変異率上昇は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に得ていた結果にMutation accumulation assayによる結果を加え、論文として発表した。Mutation accumulation assayの結果、EndoMS型ミスマッチ修復機構を備えた生物では、短いinsertionやdeletionを抑制するシステムを別に備えている可能性が強く示唆された。EndoMSの下流で働く因子の探索には難航しているものの、切断様式を検討するためのシステムの開発や、成果論文の発表は順調に進んでいる。C. glutamicumではInsertion, deletion変異の抑制に関わるシステムが別に存在することなど、派生する新たなテーマも創出できており、進捗状況としては「おおむね順調」が妥当であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
EndoMSによる切断様式の確認のため、2018年度に作製したEndoMS発現誘導システムを持つ株を用いて複製エラー・EndoMS依存的に二本鎖切断が行われているかを確認する。 EndoMSによる切断時に新生鎖認識が行われているとすると、EndoMSと直接的に相互作用し、切断効率を変化させることが分かっているsliding clampの関与が疑われる。このため、sliding clampによるEndoMS活性制御の分子メカニズムの解析も課題に追加する。より効率的かつ着実に追加課題を遂行するため、分担研究者を追加した(大阪医科大学 福井健二 助教)。 C. glutamicumがEndoMSでは切断できないinsertion, deletionをどのように抑制しているのかは非常に興味深い。この原因の探索についても研究課題として追加する。このため、insertion, deletionの変異が起こった変異体を選抜できる系を確立し、候補遺伝子(様々なnuclease)破壊株におけるinsertion,deletion変異率測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定額を使用し、少額の残金が生じた。 次年度分の物品購入費に充てる。
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