研究課題/領域番号 |
18K06195
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小口 祐伴 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (40599370)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シーケンス技術開発 / 1細胞トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
本件は、非増幅シーケンサーに適用可能なシーケンスライブラリの調製方法を確立することを目的とする。この実現のために、非増幅シーケンスのフローセル(シーケンス反応槽)内部でライブラリ調製を試みる方法(On-chip法)と、シーケンスフローセル外部で試みる方法(Off-chip法)の2つのアプローチを計画した。本年度は特にOff-chip法に関する検討を中心に進めた。 Off-chip法として、RNAテンプレートからcDNAへと逆転写反応をする際に生じるTS(Template Switching)反応を活用する調製法を検討した。達成度の確認を段階的に行うために、PCRにより増幅したもの、および、PCRにより増幅しなかったもの(非増幅サンプル)の2つの段階での遺伝子の検出を試みた。PCRにより増幅したライブラリについてはさらに既存のシーケンス法(MiSeq, イルミナ社)でも計測し、非増幅シーケンス法のそれと比較した。増幅ライブラリに関しては既存シーケンス法に匹敵する遺伝子の検出に至った。一方、非増幅ライブラリにおいては有意な遺伝子の検出には至らなかった。 また、非増幅シーケンスに際し、シーケンスの対象となるDNA分子(シーケンスライブラリ)は、シーケンスフローセル上に捕捉される必要がある。その捕捉を担う捕捉プローブの、シーケンスフローセルとの結合様式(結合強度)に関する検討も上記に並行し実施した。捕捉プローブとシーケンスフローセルの結合様式として、共有結合を活用する場合と、非共有結合を活用する場合がある。これまでの知見として、非共有結合の場合の方がシーケンス能が劣ることが分かっていた。しかし、本年度の検討において、非共有結合を活用した場合でも、共有結合する場合に匹敵する条件を見出すことができた。これを活用することで、Off-chip法の実現に向けた条件検討の選択肢が拡がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共有結合を介した捕捉ブローブを用いたシーケンス解析と比較して、非共有結合を介した捕捉プローブを用いたそれは、シーケンスリード長(シーケンス解析によって読み出される塩基配列の長さ)が短くなるという問題があった。本年度は、非共有結合(具体的にはbiotin-avidin結合)であっても、共有結合と同等のリード長を得るにまで至った。これは特に計画しているOff-chipライブラリ調製法の実現に資するものであり、期待以上の進捗であった。一方、TS反応を活用し、かつPCR非増幅のライブラリについては、現状、遺伝子の検出に至っていない。進捗の見られた部分と遅れている部分を総じて、概ね順調な進捗と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により、非共有結合捕捉プローブも実用可能なレベルにあることがわかった。このことは、特にOff-chip法の実現に向けて有用であることから、引き続きOff-chip法の実現に向けた検討を重点的に実施する。これと並行して、本年度得られた成果を論文として報告する準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、申請者の所属先が申請時の所属先から異動した(東京大学から理化学研究所)。それに伴い、研究環境の整備に時間を費やし、当初の計画に対して実験試行回数が減った。具体的にはシーケンスに必要な試薬等などの消耗が減ったことから、消耗品購入のために計上していたランニングコスト等が減り、次年度使用額が生じた。一方、実験の進捗としては期待以上の結果も得られたことから、異動による影響は少なかったと捉えているが、本年度に未実施分のシーケンスを次年度に実施する必要があり、主にこれらに次年度使用額を用いることを計画している。
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