研究実績の概要 |
G Protein-Coupled Receptor (GPCR)は単量体 (モノマー)としてのみならず、二量体 (ダイマー)やそれ以上の高次複合体 (オリゴマー)として存在し、機能することが報告されている。ダイマーやオリゴマーの機能はリガンド結合能、シグナル伝達機構など少なくとも1つにおいてモノマーのものとは異なるため、様々な現象において重要な役割を果たすと考えられている。我々は以前にGPCR間相互作用ペアを予測する手法GPCR-GPCR interaction pair predictor (GGIP)を開発した。本研究では、GGIPを応用し、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)への疾患関連変異のうち、GPCR間相互作用に影響を及ぼし疾患を誘発するものを予測した。野生型GPCR配列ペアをGGIPに入力した時と、ペアの少なくとも一方に疾患関連変異を導入した時の予測結果を比較し、予測結果が変化した場合、相互作用に影響を及ぼす変異であると判定した。相互作用ペアを非相互作用ペアに変化させる変異を相互作用阻害変異、非相互作用ペアを相互作用ペアに変化させる変異を相互作用促進変異と定義し、UniProtデータベースから取得した疾患関連変異についての解析を行なった。ロドプシンの二量体形成を阻害することで網膜色素変性症を引き起こすとされる、ヒトロドプシン変異体(F45L, V209M, F220C)は、いずれも相互作用阻害変異と予測された。発がん関連体細胞変異を用いた解析では、相互作用阻害変異のほうが相互作用促進変異よりも高頻度に起こることが示唆された。相互作用阻害変異は膜貫通領域3と7の中央部分、細胞内第1ループと第3ループで高頻度であった。一方、相互作用促進変異は膜貫通領域2の中央と細胞外第1ループで高頻度であった。
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