研究課題/領域番号 |
18K06201
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北村 朗 北海道大学, 先端生命科学研究院, 講師 (10580152)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | RNA / タンパク質凝集体 / リコンビナントタンパク質 / ALS / TDP-43 |
研究実績の概要 |
TDP-43のカルボキシル末端断片をMBPおよびポリヒスチジンタグ融合型として大腸菌において発現させることができた.ただし,ほぼ全てのタンパク質が非イオン性界面活性剤存在下で不溶性であったことから,尿素またはグアニジン塩酸による可溶化を試みた.どちらの変性剤でも可溶化でき,その変性可様化状態でNi-NTAカラムを通して精製することができた.この状態から変性剤を透析法またはスピンカラム法にて除去し,可溶化させる条件検討を行った.しかしながら,可溶化効率が極めて悪く,多くのタンパク質が析出した.このため,変性剤の除去ステップの検討を行ったが,完全な変性剤除去条件を確立するには至っていない. 次に,細胞内でのRNAシャペロン効果を実証するために,蛍光標識合成RNAを培養細胞へ導入するための条件検討を行った.その結果,ビーズローディング法を用いて蛍光標識RNAを生細胞内へ導入する系を確立できた.さらに,生細胞内に導入したRNAの動態を,Fluorescence recovery after photobleaching (FRAP)法を用いて解析したところ,RNA配列の違いにより様々な動態を示すことがわかった.特にAU-richなRNAでは動的割合が大きく,GC-richなRNAでは動的割合が低い(不動性分子も存在する)ことがわかった.さらにこの不動性は核内だけでなく細胞質でも見られることから,これらのRNAはおそらくDNAではなくタンパク質またはタンパク質-RNA複合体と相互作用し,拡散性が遅くなっているのではないかと考えられた.このことは,RNAのシャペロン機能,特に細胞内のそれを実証していく上で重要な基礎的知見となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TDP-43のカルボキシ末端断片を大腸菌リコンビナントタンパク質として発現・精製する条件は確立した.またそれらのタンパク質の可溶性や適切に可溶化する変性剤の選定・検討,変性剤除去後の可溶化率など基礎的条件検討までは確立できた.ただし,これらの変性剤除去後,予想に反して可溶化率が低かったことから,RNAの効果をみる実験に着手できていない.そのため,研究全体としては概ね順調ではあるものの,予想以上の進展ではないと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
可溶化条件の確立できていないTDP-43カルボキシル末端断片の可溶化条件の検討を引き続き行う.具体的には,変性剤を低濃度で添加した状態で可溶性を維持するか,あるいは結合することが判明しているRNAを変性剤除去時に添加しておくことにより可溶化率が上昇するか検討する.このことにより,RNAのシャペロン様効果を実証できると考えられる. リコンビナントタンパク質の系には可溶性という困難さも伴うため,ある程度の可用性を維持して発現することがわかっているNeuro2AやHEK293などの哺乳類培養細胞に発現させたものを精製することなども検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本来は2018年度の二月から三月にかけて実施予定であった課題のために用いる予定であったが,当課題の別の検証に時間を要し,三月までに実施できなかった.ただし,年度が明けてすぐにその研究のために必要な消耗品・器具を購入してすでに実施開始済みである.また前年度の末に使用予定であったものが二ヶ月先延ばしになっただけであり,三カ年の研究計画としての変更点はない.
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