細胞内の分解の場であるリソソームは球状のオルガネラであるが、特定の条件下では管状になることが知られている。しかしながら、そのメカニズムや生物学的な意義はこれまでほとんど明らかにされていなかった。私たちは、ショウジョウバエの変態期に、一群の筋細胞がオートファジー依存的にリモデリングされることを先に報告した。さらに、筋細胞がリモデリングされる際に、管状のリソソームネットワークが筋細胞に張り巡らされる新たな現象を見出した。 本研究では、管状リソソームネットワークの形成メカニズムとその機能を解析した。変態期の筋細胞の経時的な観察より、管状リソソームネットワークは、細胞内分解システムであるオートファジーが誘導される時期に形成される一過的な構造であることがわかった。また、その形成はオートファジーとリソソームの分解活性の双方に依存していた。実際に、オートファジー関連遺伝子を喪失させると、管状構造が失われ、球状のリソソームが多数観察された。さらに、ライブイメージングにより、管状のネットワーク構造により、細胞内の分解コンパートメントが広い範囲で同調していることが明らかになった。これらの結果から、管状リソソームネットワークは、効率的かつ同調した細胞内分解を可能にしていると考えられる。 本研究により、管状リソソームネットワークの形成メカニズムと機能の一端を明らかにすることができた。管状リソソームは、生物種を越えて保存されており、筋細胞に限らず他の組織でも観察されている。本研究は、今後のリソソーム研究の重要な基盤になるものだと考えられる
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