我々は高血圧症PHAII原因遺伝子WNKの解析から生体内においてWNK→SPAK/OSR1→共輸送体というシグナル伝達経路が腎臓における血圧調整に関与することを示してきた。一方、WNK1は遺伝性知覚ニューロパチー(HSANII)の原因遺伝子でもあり、このWNKの神経系における機能を解明するため、解析を進めた。これまでに周辺因子を探索し、結合因子としてGSK3βを単離し、ショウジョウバエを用いた遺伝学的解析を進めた。 その結果、ショウジョウバエの翅において、WNKの異所発現により、異所的な翅脈が形成され、sgg(GSK3βのショウジョウバエ相同遺伝子)変異体により、この異所的な翅脈形成が抑制された。さらに、WNK変異体により、ショウジョウバエの腹部では形態形成不全が起こった。Sggの異所発現により、不完全ながらも形成不全が抑制され、腹部が形成された。以上のことから、SggがWNKシグナル伝達経路の新規下流因子として機能することが明らかになった。一方、WNK1の発現により活性化したLhx8の発現が、GSK3βのノックダウンにより抑制されたが、GSK3βの発現によるLhx8の活性化は、WNKのノックダウンでは抑制できなかった。さらに、OSR1においても、WNKと同様の結果が得られたことから、ほ乳類でもGSK3βがWNKシグナル伝達経路の下流因子として機能し、Lhx8の発現に関与することが明らかになった。
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