研究課題/領域番号 |
18K06212
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
丑丸 敬史 静岡大学, 理学部, 教授 (50262788)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オートファジー / ヌクレオファジー / TORC1 / ラパマイシン / 栄養源飢餓 / 核小体 / rDNA |
研究実績の概要 |
出芽酵母ではミクロヌクレオファジーにより液胞膜と核膜と接触している部分(NVJ)において核の一部が液胞内に貫入し分解される。それにより核小体タンパク質が分解される一方で染色体は分解されない。さらに、rDNA (rRNA遺伝子)は核小体のコアになっているにもかかわらず分解されない。この機構は不明であった。我々はこれに関して解析を進め、これまでに以下のことを見出し報告した。窒素源飢餓およびラパマイシンによるTORC不活性化により、ヌクレオファジーで分解される核小体タンパク質がNVJ近傍に近寄る一方、分解されないrDNA領域は逆にNVJから遠ざかり、通常は核小体内に内包されるrDNAが核小体タンパク質から分離した。核膜にrDNAを繋ぎ止めているCLIP複合体とcohibin複合体を欠く変異株ではrDNAの再配置が抑制され、核小体タンパク質の再配置も抑制され、TORC1不活性化後の核小体タンパク質の分解が抑制され、飢餓後の生存率も低下した。このことはCLIP/cohibinによるrDNAと核小体タンパク質の局在移動がヌクレオファジーによる核小体タンパク質の分解と飢餓適応に重要であることを示唆する。 本年度は、さらに、このrDNA染色体の移動を引き起こす原動力の解析を行った。その結果、次のことを見出し報告した。コンデンシンとHmo1を介してのrDNAの凝縮がrDNAの移動には必要であった。加えて、核小体タンパク質のNVJへの接近もコンデンシンとHmo1を必要とした。このことは核小体が染色体動態に関連して、間接的に位置決めされている可能性を示唆する。コンデンシンもしくはHmo1の機能欠損株はCLIP-cohibinの変異体と同様に、核小体タンパク質分解が抑制され、飢餓後の生存率も低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、rDNAの凝縮がrDNAの移動と核小体タンパク質の移動に必要であるとの作業仮説を立てた。この作業仮説を検証するために、rDNAの凝縮に必要なcondensinとHmo1の欠損株を用いて実験を行ったところ、この仮説が正しいことが立証された。一方、たとえこのシステムが働かなくてもrDNAの分解は起こらず、このことは、rDNAの凝縮と局在移動はrDNAがヌクレオファジー分解から逃れることには必須ではないことを示す。このように、本研究は当初の作業仮説をさらにそれを発展させ、順調にそれを検証しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
飢餓時の染色体凝縮がどのようなシグナル伝達で誘導されるのかはまだ不明である。分裂期の染色体凝縮の機構は研究が進んでいるため、この情報をもとにして研究を進める。分裂期の染色体凝縮な因子の変異体で飢餓時のrDNA染色体の凝縮が影響を受けるかどうかを検証する。その際のヌクレオファジーにおいても検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に予想を超えて論文を投稿する可能性が出てきたため、予算を次年度使用することにした。
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