研究実績の概要 |
小胞体の構造異常タンパク質は小胞体関連分解によって処理される。特徴として小胞体のタンパク質が小胞体膜を通過し、細胞質のプロテアソームで分解される。N型糖鎖は3つのグルコース、9つのマンノース、2つのN-アセチルグルコサミン(G3M9)からなり、その小胞体での分解に糖鎖の刈り込みが重要なことが分かっている。そして近年、オルガネラ内は均質な空間ではなく、その中に異なる役割を担う限局された領域(ゾーン)が存在することが明らかにされつつある。小胞体においても、構造形成ゾーン、逆行輸送ゾーンという機能的な区画に分かれていることが当研究室の結果より示唆されており、本研究では、N型糖鎖のマンノースが刈り込まれた形を認識するレクチン分解因子を中心に、小胞体関連分解機構を解析した。 その結果、OS9とXTP3Bの機能は重複し、共にN型糖鎖依存分解経路の基質ATF6を分解へ導いていることを明らかにした。また小胞体関連分解因子の刈り込みを行うEDEM familyのうちEDEM2の解析を主に行い、EDEM2がTXNDC11とジスルフィド結合依存的な複合体を形成して、N型糖鎖のトリミングを遂行していることが分かった(George*, Ninagawa* et al., 2020 eLife *Equal contribution)。また小胞体関連分解の解析として、第二世代抗精神病薬オランザピンが、プロインスリンの適切な分子内ジスルフィド結合形成を妨げ、分子間ジスルフィド結合形成を誘発することによって、プロインスリンの構造異常が引き起こしていることを明らかにした。この結果、プロインスリンの主要な局在が、インスリン分泌顆粒から小胞体へとシフトすることも明らかにできた(Ninagawa et al., 2020 eLife)。
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