細胞の発生する力は、周囲を取り巻く微小環境に伝わり、移動、形態変化、増殖、分化決定など様々な細胞機能に重要であることがわかってきている。本研究では、細胞内分子イメージング法である単分子スペックル顕微鏡法により、力を発生するアクチン細胞骨格と細胞外マトリックスを繋ぐ接着斑分子の構造変化を直接可視化し、力伝達の機序を一分子レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、主要な接着斑分子について、以下の解析を行った。まず、接着斑分子ビンキュリンの部分機能欠損変異体を単分子イメージングにより定量解析をさらに継続して発展させ、ビンキュリンがアクチンネットワークに会合する機構を明らかにした。次に、接着斑分子タリンの細胞葉状仮足における細胞内高精度単分子イメージング定量解析を進め、Dimitris Vavylonis教授(リーハイ大学、アメリカ)の研究グループと共同して、接着斑分子が細胞内アクチンネットワークと細胞外マトリックスを繋ぐ機構の数理モデル解析を進めた。さらに、接着斑分子パキシリンとフォーカルアドヒジョンキナーゼの細胞内単分子動態解析を行った。 これらの研究成果は、国際会議であるアメリカ細胞生物学会年会(American Society for Cell Biology / EMBO 2020 meeting、オンライン開催)にてポスター発表を行った。また、第43回日本分子生物学会年会 ワークショップにおいて、招待口演を行った。さらに、第72回細胞生物学会においてワークショップ「細胞操作と定量イメージングで知る細胞骨格ダイナミズム」をオーガナイズし、発表した。
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