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2019 年度 実施状況報告書

接着力の差を並び替えに変換して自律的に組織をつくるメカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 18K06219
研究機関神戸大学

研究代表者

富樫 英  神戸大学, 医学研究科, 助教 (90415240)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード細胞間接着 / 細胞骨格 / 細胞選別
研究実績の概要

組織は多種類の細胞からなり、細胞はそれぞれの接着性などの違いをもとに自ら動いて並び替えを行うことで機能的な組織構造を形づくる。申請者はこれまでに接着分子ネクチンに着目し、ホモフィリックよりもヘテロフィリックな接着が強いという性質によって、2種類の細胞が自らモザイクパターンに並ぶという新しい細胞選別の基本原理を見出し、これが様々な組織内の細胞の並び方を決めていることを示してきた。しかし、このようなモザイク様の細胞選別において、細胞がどのようにして隣接する細胞との接着力や親和性の違いを感知し、並び替え運動に変換するのかはわかっていない。
本研究では、細胞接着と細胞骨格の連携に働く分子群に着目し、接着力の違いを細胞選別運動に変換するメカニズムを明らかにする。
前年度までに、異なるネクチンを発現している細胞が出会うと、相互に割込みを繰り返し、モザイクパターンに並び替わる際に、従来のモデルから想定されていたものとは異なるカドヘリンなどの接着分子の偏った分布が観察された。本年度も引き続き、異なるネクチンを発現する細胞株を用いて、モザイクパターンを形成させるための細胞選別実験を行い、接着分子や細胞骨格の動態解析を進めた。その結果、割り込みに働く2つの接着面では、これらのうちの一方の接着面だけに接着分子や細胞骨格が偏って存在するだけではなく、接着面の構造が異なること、および接着面の運動能が異なることなど、様々な非対称性が存在することがわかってきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

イメージングに必要な顕微鏡のセットアップが進み、細胞選別実験の観察が効率よく行えるようになった。その結果、解析データが着実に得られてきている。この実験系を用いて、本年度も多くの新知見が得られてきた。異なるネクチンを発現する細胞の混合培養を行い、細胞選別における割込みの際の細胞の挙動と、接着分子や細胞骨格の分子動態を解析から、従来考えられていたモデルとは異なる分子の挙動が観察され、新たな研究の端緒につながった。さらに、分子局在の非対称性のみならず、細胞構造の非対称が明らかになってきた。今後、分子と構造の非対称性を作り出すきっかけとなるメカニズムについてさらに検討を進める。

今後の研究の推進方策

これまでの研究結果から、異なるネクチンを発現する細胞間での細胞選別で見られる割込みの際には、割り込みに働く2つの接着面のうちの一方の接着面だけに接着分子や細胞骨格が偏って局在することが観察された。すなわち、割込む細胞と割込まれる細胞との間につくられる境界面の接着力は対称ではなく、割込む細胞のヘテロフィリックな2辺の接着面では、接着分子や細胞骨格だけでなく、細胞構造そのものが異なっていた。この非対称性を作り出すメカニズムを明らかにする目的で、アファディンやαカテニンの様々な変異体を用いて細胞選別実験を進める。また、顕微鏡の解像度をあげて接着面の微細構造の観察を行い、構造非対称性の解析をすすめる。また、接着分子が偏って局在することで割込みを引き起こすメカニズムについては数理モデルを用いて検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

2019年度末に予定していた出張の多くがキャンセルになったため旅費の繰越が生じた。また、神戸大学の共同実験施設および動物実験施設への利用料として、2020年3月末に支払う予定をしていたが、予想していた金額よりも請求額が少なかったため、余剰分を次年度に繰り越した。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] A population dynamics model of cell-cell adhesion incorporating population pressure and density saturation2019

    • 著者名/発表者名
      Jose A Carrillo, Hideki Murakawa, Makoto Sato, Hideru Togashi, Olena Trush
    • 雑誌名

      Journal of theoretical biology

      巻: 474 ページ: 14-24

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.jtbi.2019.04.023

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] MOB1 regulates thymocyte egress and T‐cell survival in mice in a YAP1‐independent manner2019

    • 著者名/発表者名
      Wakako Kato, Miki Nishio, Yoko To, Hideru Togashi, Tak Wah Mak, Hidetoshi Takada, Shouichi Ohga, Tomohiko Maehama, Akira Suzuki
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 24 ページ: 485-495

    • DOI

      https://doi.org/10.1111/gtc.12704

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hippo pathway controls cell adhesion and context-dependent cell competition to influence skin engraftment efficiency2019

    • 著者名/発表者名
      Miki Nishio, Yousuke Miyachi, Junji Otani, Shoji Tane, Hirofumi Omori, Fumihito Ueda, Hideru Togashi, Takehiko Sasaki, Tak Wah Mak, Kazuwa Nakao, Yasuyuki Fujita, Hiroshi Nishina, Tomohiko Maehama, Akira Suzuki
    • 雑誌名

      The FASEB Journal

      巻: 33 ページ: 5548-5560

    • DOI

      https://doi.org/10.1096/fj.201802005R

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 細胞間接着の親和性とモザイクパターン2020

    • 著者名/発表者名
      富樫 英
    • 学会等名
      AIMaP研究集会 反応拡散系と実験の融合3
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞間接着の親和性と感覚組織のパターン形成2019

    • 著者名/発表者名
      富樫 英
    • 学会等名
      京都大学 第10回医学数物連携勉強会
    • 招待講演
  • [学会発表] 接着の偏在によるモザイク形成メカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      富樫 英
    • 学会等名
      ソフトバイオ研究会2019
    • 招待講演
  • [学会発表] ネクチンのヘテロフィリックな相互作用によるモザイク様の細胞パターン形成では接着力と収縮力の偏りが割込みを駆動する2019

    • 著者名/発表者名
      久野舟平、勝沼紗矢香、鈴木聴、富樫英
    • 学会等名
      第19回日本蛋白質科学会年会 第71回日本細胞生物学会大会 合同年次大会
  • [学会発表] 細胞間接着の親和性と感覚組織のパターン形成:生物的背景2019

    • 著者名/発表者名
      富樫 英
    • 学会等名
      京都駅前セミナー
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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