研究課題/領域番号 |
18K06220
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
梶保 博昭 神戸大学, 医学研究科, 講師 (70401221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小胞体 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
小胞体はチューブ構造とシート構造からできている。チューブ構造はthree-way junctionと呼ばれる部位で連結することで網目構造を形成している。網目構造はthree-way junctionの形成や消失を繰り返しながらダイナミックに形状を変化させている。Three-way junctionは膜変形タンパク質によって支えられている。したがってthree-way junctionの形成や消失には膜変形タンパク質の合成や分解による量の制御が関わると考えられるがその分子機構は分かっていない。 小胞体でのタンパク質の分解機構としてユビキチン-プロテアソーム系やERファジーが知られている。Lunaparkはthree-way junctionに局在するタンパク質で、ユビキチンリガーゼを持つことが報告されている。私はlunaparkが膜変形タンパク質をユビキチン化して分解することで、小胞体の網目構造の形状を変化させると考えている。前年度はlunaparkがthree-way junctionの形成に関わる約66kDaの膜変形タンパク質(p66)をユビキチン化することを見つけた。本年度はlunaparkによるp66へのユビキチン化について研究を進め、以下の結果を得た。 1)Lunaparkに結合してユビキチンリガーゼ活性を抑制するCAND1を培養細胞でノックダウンすると、p66のユビキチン化が増加した。 2)Lunaparkのthree-way junctionへの局在がp66へのユビキチン化に重要であることを見つけた。 このように本年度は、lunaparkのユビキチンリガーゼ活性による小胞体の形状変化の分子機構について当初の計画とおりの成果をあげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LunaparkがCAND1と結合することでp66へのユビキチン化を抑制することを明らかにした。また、lunaparkによるp66へのユビキチン化にlunaparkのthree-way junctionへの局在が重要であることを見出した。Lunaparkのユビキチンリガーゼ活性による小胞体の形状変化の分子機構を明らかにするという目的に対して、おおむね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1)小胞体の形状変化時のlunaparkによる膜変形タンパク質へのユビキチン化反応の促進;Lunaparkのユビキチンリガーゼ活性の抑制が小胞体のチューブ構造の維持に必要であることを予備的な研究結果から得ている。この結果から小胞体の形状変化にlunaparkのp66へのユビキチン化が関わることが考えられる。そこで小胞体のチューブ構造がシート構造へと変わる細胞分裂期、および小胞体ストレスの環境下でlunaparkによるp66へのユビキチン化が増加しているかを検討する。 2)Lunaparkによるユビキチン化反応に続くシート構造を支えるタンパク質量の増加;Lunaparkによって小胞体のチューブ構造を支えるタンパク質が分解され、シート構造が増える際にシート構造を支えるタンパク質が増加するかは不明である。シート構造を支えるタンパク質としてCLIMP63が知られている。そこで、細胞分裂期や小胞体ストレスを与えた際にCLIMP63のタンパク質量が増加するかをイムノブロットにより調べる。またlunaparkをノックダウンした際にCLIMP63の増加が抑制されるかも測定し、CLIMP63の増加にlunaparkが必須であるかを調べる。 3)Lunaparkによる膜変形タンパク質へのユビキチン化阻害時の小胞体の形状変化;Lunaparkによる膜変形タンパク質のユビキチン化反応が小胞体の形状変化に必要であるかを調べる。p66の点変異体を作成して、lunaparkがユビキチン化するp66のリジン残基を明らかにする。膜変形タンパク質の野生型、およびユビキチン化できない変異体をCOS-7細胞にトランスフェクトする。細胞分裂期や小胞体ストレスを与えた時の小胞体の形状を免疫染色により観察する。小胞体の形状が野生体では変化し、変異体では変化しないかに着目する。
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