研究課題/領域番号 |
18K06224
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
内山 和彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50298428)
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研究分担者 |
内藤 裕二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00305575)
高木 智久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70405257)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Wnt5a / IBD / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
本提案研究は、申請者が世界で初めて発見・報告したWnt5aペプチドの腸管炎症抑制作用に着目し、炎症性超疾患(Inflammatory bowel disease: IBD)に対する新規治療としての可能性を創出するため、分子生物学的な作用機序、薬理効果を実験的に検証することを目的とするものである。 ・マウスDSS腸炎に対する効果:3%DSS投与時にWnt5aペプチド(10μg/body)を連日腹腔内投与し、7日目に炎症抑制効果を判定した。予備実験と同様、ペプチド投与群においてはDSSを飲水させたマウスでの体重減少の抑制、腸管長短縮の抑制、組織学的な炎症細胞浸潤の抑制、さらに炎症性サイトカインであるTNFα、IFNγ、IL-1βなどの発現抑制、を認めた。Wnt5aペプチドがDSS腸炎に対して抗炎症作用を有していることが証明される結果であった。 ・臨床検体を用いた検討:京都府立医科大学倫理審査委員会の承認を得ることができ、現在潰瘍性大腸炎患者の大腸粘膜検体を採取している。大腸粘膜検体は、患者の大腸各部位(回盲部、S状結腸、直腸)より生検鉗子にて採取し、生検検体はISOGENにて保存の上、real time PCRで解析した。生検組織におけるWnt5aの発現は内視鏡での重症度とある程度相関しており、重症であるほど高い発現を認めた。また、他の炎症性メディエーターとの比較に関してはTNFα mRNAとの相関を検討したが、現在収集した検体においては、Wnt5aとTNFαでは明らかな相関は認めていない。今後、他のサイトカインを測定の上、Wnt5a発現との関連性を検討予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス実験腸炎モデルに関しては概ね予定通り進んでいる。また臨床検体を用いたヒト大腸粘膜におけるWnt5a発現解析も予想以上に症例が蓄積しており、当初の予定をすでに満たしている状態である。 マウス実験に関して、腹腔内マクロファージを採取した上で、Wnt5aペプチドのM1への分化誘導抑制試験に関しては未だ検討できておらず、今後検討予定。
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今後の研究の推進方策 |
マウスDSS腸炎に関しては、得られた検体でさらに複数の炎症性メディエータの発現を検討する。また、ヒト臨床検体ではWnt5aと複数のサイトカイン発現との関連を統計的に解析し、Wnt5aと炎症反応との関わり、さらに、内視鏡所見との対比や再燃の有無による病態との関連を検討していく予定である。 Wnt5aペプチドによる炎症の抑制機構に関する詳細なメカニズム解明に関してはDSS腸炎の詳細な検討を元に、ターゲットを絞ってin vitroで検討を予定している。
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