研究課題/領域番号 |
18K06225
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中村 太郎 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (30291082)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中心体 / 酵母 / 膜 |
研究実績の概要 |
「微小管の形成中心」としての中心体のはたらきについては世界的に盛んに研究されてきた。一方で中心体は、動物の一次繊毛膜形成など、「細胞膜の形成起点」としてもはたらいているが、微小管形成に関する役割に比べて研究例も少なく、その分子メカニズムは不明な点が多い。分裂酵母の胞子細胞膜の形成は、中心体(酵母ではスピンドル極体SPBとよばれる)から始まる。本研究の最終目的は、この膜形成開始の分子メカニズムを解明することである。電子顕微鏡による観察で、胞子形成時にはSPBの細胞質側にMOP (meiotic outer plaque)という層状の構造が形成され、申請者らはMOPを構成するタンパク質を明らかにしてきた。しかしながら、MOPをSPBにつなぐしくみはわかっていない。本研究ではゲノムワイドな逆遺伝学と生化学的手法を組み合わせ、このしくみ解明を目指す。すでにCa2+シグナリングに中心的なはたらきをするカルモジュリンがSPBの構造タンパク質Spo15と直接結合し、これがMOPがSPBに結合することに重要であることを明らかにしてきた。本年度は、既知のSPBタンパク質とSpo15タンパク質との相互作用を調べ、その中でCdc11がカルモジュリン/Spo15が結合する可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分裂酵母のSPB本体を構成するタンパク質はかなり同定されている。この中で、核膜付近に局在するSad1、中央に局在するPcp1、細胞質側に局在するSid4, Cdc11について、Spo15と結合するかを酵母ツーハイブリッド法を用いて調べた。その結果、Cdc11についてポジティブな結果が得られた。cdc11+遺伝子は生育に必須なタンパク質であるため、温度感受性変異株を用いた解析を行った。しかしながら、用いたcdc11変異株では、胞子形成には大きな影響が見られなかった。また、Spo15-GFPタンパク質のSPBへの局在も顕著な異常が見られなかった。これらの結果については、使用したcdc11変異株の変異点の問題(cdc11は多くのタンパク質の足場としてはたらくので、どのタイプの変異を選ぶのかは重要である)やCdc11以外にSpo15の局在に関わるタンパク質が存在する可能性があると考えられる。現在、Spo15をbaitにした酵母ツーハイブリッド法により、さらなるターゲットの取得を試みている。今年度については、コロナウイルス感染対策のため、研究時間が大きく制限されたことなどから、研究が計画した通りに行えなかった部分もある。
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今後の研究の推進方策 |
Cdc11以外のSpo15に結合するSPBタンパク質を、Spo15をbaitにした酵母ツーハイブリッド法により、取得する。また、これまでの結果より、SPBの膜形成にはCa2+シグナルが重要な役割を果たしていることが明らかになっている。SPBの構造が変化し、膜形成の場となるのは第一減数分裂から第二減数分裂時であると考えている。この時期の細胞質Ca2+の濃度をリアルタイムで観察したい。ルシフェラーゼを用いた系がこれまで使われていたが、同調培養の難しい胞子形成過程では、細胞単位で観察できる系の方が望ましい。ごく最近、分裂酵母の細胞内のカルシウムイオンの濃度の変化を蛍光タンパク質GCaMPを用いて測定する系が発表された(Poddar et al., 2021)。すでにこの株を譲与していただくことになったので、この系を利用して前胞子膜形成と細胞内Ca2+濃度の関係を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染対策のため、研究進展に遅れが生じたため、計画していた研究の一部を次年度に行わなければならなくなり、研究費の一部も次年度に回した。
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