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2019 年度 実施状況報告書

核膜タンパク質LINC複合体を介する核膜情報流通システムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K06226
研究機関愛媛県立医療技術大学

研究代表者

檜枝 美紀  愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (00380254)

研究分担者 東山 繁樹  愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (60202272)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード核膜 / LINC 複合体 / SUN / nesprin
研究実績の概要

核膜内膜を貫通するSUNと、核膜外膜を貫通するnesprinは核膜間腔で結合し、LINC複合体を構成する。本研究は 「LINC複合体が,細胞外や細胞質からの力刺激、核内のヒストン修飾などの情報に応答し,核―細胞質間の両方向に情報を伝達する」という仮説を検証し,そのメカニズムを明らかにすることを目的として進めている.
LINC複合体による情報伝達経路として3つの現象に焦点をあてた.(A) SUN1はSUN1_916やSUN1_888など10種類以上のスプライシングバリアントが報告されており,組織特異的な発現が観察される.私たちは細胞のがん化に伴いSUN1タンパク質の発現が減少すること,またSUN1タンパク質の発現抑制により核小体構築に異常が起こることを見出していた.このことをもとに今年度,SUN1_888とSUN1_916が核小体構築に担う機能を解析し,これら2つのSUN1スプライシングバリアントは核小体構築に異なる役割を果たし,両者とも必要であることを明らかにした.(B) 昨年度に明らかにしたLINC複合体の細胞接着装置成熟への関与は,SUN1を発現抑制した細胞ではvinculin、tailin、paxillinなどFA構成因子のリクルートが抑制され,一方でFAの成熟に必要であるintegrinのmRNA発現量や活性化型タンパク質の量は亢進すること,しかしインテグリン分子の細胞内輸送は影響を受けないことを明らかにした.(C) 私達はLINC複合体がゴルジ体構築維持に必要であることを見出していたが,今年度,定常状態ではSUN1を含むLINC複合体が形成され,細胞核近傍に集積したドーナツ型のゴルジ体が形成されること,SUN1発現抑制により,SUN2を含むLINC複合体が形成されSUN2/nesprin-2/KIF20Aにより細胞質に分散したゴルジ体になることを示す結果を得た.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では,(1) LINC複合体形成メカニズムの解析,(2) LINC複合体結合因子の探索 (3) LINC複合体の構築制御が核―細胞質間情報伝達に担う生理的機能の解明という3方向から研究を進めている.本年度は(1)および(3)を中心に進めた.
(1)LINC複合体形成メカニズムの解析:小麦胚芽無細胞タンパク質合成系により合成したLINC複合体構成因子およびヌクレオソームを用いる予定である.これまでにリポソーム存在下でこの系を用いて合成を行い,膜タンパク質であるSUN1のスプライシングバリアント,SUN1_785, SUN1_888, SUN1_916およびSUN2タンパク質を3量体として合成する方法を確立した.同様にこの系を用いて,ヒストン修飾酵素SUV39H1および,ヒストンH2A, H2B, H3, H4を発現させ,翻訳後修飾を付加したヌクレオソームの構築を試みている.現在までにタンパク質の発現は確認しているが,ヌクレオソームの構築が確認できておらず,若干の遅れがある.
(3)LINC複合体の構築制御が核―細胞質間情報伝達に担う生理的機能の解明: 私たちがLINC複合体に結合することを見出した微小管モータータンパク質KIF20Aは,SUN1非存在時に,SUN2/nesprin-2と共にゴルジ体の細胞質への分散に寄与することが明らかになり,これは私達の仮説 「LINC複合体は細胞質または核の情報に応答して、組成の異なる複合体を形成し、核―細胞質間において情報を伝達する」を裏付ける現象である。「LINC 複合体による、細胞接着装置の成熟寄与」に関しても,より詳細なメカニズムを示す結果を得ることができた.さらに,LINC複合体による核小体構築制御も明らかになり,当初の計画以上に進んでいる.
そのため(1)と(3)を総合して概ね順調にすすんでいると判断した.

今後の研究の推進方策

これまでに細胞質から核へ,核から細胞質,核から細胞膜へLINC複合体が情報を伝達している3つの現象を明らかにした.そこで,これらLINC複合体が関与する情報伝達経路の厳密な分子メカニズムを明らかにするために,今年度は,in vitro LINC複合体構成系を用いて,LINC複合体の構築制御メカニズムの解明を中心に取り組くむため,下記3つのことを推進する.
(i) LINC複合体構成因子nesprinのin vitroでの合成: ヒト体細胞では3つまたは4つのnesprin (nesprin 1~4) ファミリー分子が発現している。本年度はこれらnesprinタンパク質をリポソームを加えた小麦胚芽タンパク質合成系において合成する。但し,nesprin-1およびnesprin-2は各々全長で1010kDa, 796kDaと巨大タンパク質であるため,LINC複合体形成解析に必要な領域だけを使用したリコンビナントタンパク質を作成する.
(ii) ヌクレオソームの形成 ヌクレオソームの合成に関しては小麦胚芽を用いたタンパク質合成系だけでなく大腸菌を用いたリコンビナントタンパク質合成や,化学合成・修飾も視野にいれ翻訳後修飾をうけたヌクレオソームの合成の可能性をさぐる。

これらの材料 (SUNタンパク質,nesprinタンパク質,翻訳後修飾を付加したヌクレオソーム)を使用してLINC複合体形成にヌクレオソームが与える影響を解析する.その後,得られた結果を細胞内において検証する.

次年度使用額が生じた理由

計画どおりに使用したが,当該予算 1,311,699円の0.029%に相当する383円の誤差が生じたため,次年度に使用する.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Human THO maintains the stability of repetitive DNA2020

    • 著者名/発表者名
      Katahira J, Senokuchi K, Hieda H.
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 25 ページ: 334-342.

    • DOI

      doi.org/10.1111/gtc.12760

    • 査読あり
  • [雑誌論文] SPOP is essential for DNA-protein crosslink repair in prostate cancer cells: SPOP-dependent removal of topoisomerase 2A from the topoisomerase 2A-DNA cleavage complex.2020

    • 著者名/発表者名
      Watanabe R, Maekawa M, Hieda M, Taguchi T, Miura N, Kikugawa T, Saika T, Higashiyama S.
    • 雑誌名

      Mol Biol Cell

      巻: 31 ページ: 478-490

    • DOI

      doi: 10.1091/mbc.E19-08-0456

    • 査読あり
  • [学会発表] 前立腺癌細胞のtopoisomerase2A制御におけるSPOPの新規機能解明とDNA修復標的治療の治療マーカーとしての可能性2020

    • 著者名/発表者名
      渡辺隆太, 前川大志, 檜枝美紀, 田口友彦, 三浦徳宣, 菊川忠彦, 東山繁樹, 雑賀隆史
    • 学会等名
      第29回泌尿器科分子・細胞研究会
  • [学会発表] 前立腺癌細胞のtopoisomerase2A制御におけるSPOPの新規機能解明とDNA修復標的治療の治療マーカーとしての可能性2020

    • 著者名/発表者名
      渡辺隆太, 前川大志, 檜枝美紀, 田口友彦, 三浦徳宣, 菊川忠彦, 東山繁樹, 雑賀隆史
    • 学会等名
      第108回日本泌尿器科学会
  • [学会発表] LINC complex component SUN1 is required for the generation of traction force and maturation of focal adhesions2019

    • 著者名/発表者名
      Ueda, N., Matsui, T., Deguchi, S., Hieda, M.
    • 学会等名
      6th Zoo meeting, Cell Adhesion and Migration in Inflammation and Cancer
    • 国際学会
  • [学会発表] 核膜タンパク質LINC複合体による核小体構築制御機構2019

    • 著者名/発表者名
      里見えりな  植田雅子 檜枝美紀
    • 学会等名
      第92回日本生化学会大会
  • [学会発表] 子宮体癌におけるメチル化DNA結合タンパク質を用いた,DNAメチル化解析2019

    • 著者名/発表者名
      坂本真吾, 末武勲, 窪田裕美, 門屋孝志, 三好陽子, 石原香菜子, 松本優衣, 髙石治彦, 水野洋輔, 大城由美, 檜枝美紀
    • 学会等名
      第58回日本臨床細胞学会秋期大会
  • [学会発表] Functional analysis of RNA binding protein YB-1 involved in nuclear lobulation in HeLa cells2019

    • 著者名/発表者名
      Kawabata, T., Ikeda, T., Noguchi, T., Hirata, H., Takamori, N., Komiya, I. Igarashi, M., Hieda, M., Tani, T.
    • 学会等名
      日本分子生物学会第42回年会
  • [学会発表] The SUN1 splicing variants SUN1_888 and SUN1_916 differentially regulate nucleolar structure2019

    • 著者名/発表者名
      Satomi, E., Ueda, M., Hieda, M.
    • 学会等名
      アメリカ細胞生物学会・EMBO meeting
    • 国際学会
  • [図書] 実験医学増刊 Vol.38 疾患に挑むメカノバイオロジー 循環器、運動器、がん、再生・発生に生体内の力はどうかかわるのか2020

    • 著者名/発表者名
      檜枝美紀 (曽我部正博編集)
    • 総ページ数
      219
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-0386-2

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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