研究課題
核膜内膜を貫通するSUNと、核膜外膜を貫通するnesprinは核膜間腔で結合し、LINC複合体を構成する。SUNは核内でクロマチンなどの核骨格と結合し、nesprinは細胞質においてアクチン骨格や微小管モーター等と結合する。私たちは 「核膜を貫通し、核と細胞質を物理的に繋ぐLINC複合体が、核―細胞質間の情報を両方向に伝達する」という仮説を立て、その仮説を検証することを目的として研究を進めてきた。その結果、下記3点の成果を得た。SUN1タンパク質はSUN1遺伝子から10種類以上のスプライシングバリアントが組織特異的に発現する。広範囲に発現するSUN1_888とSUN1_916はヒストン翻訳後修飾の分布に異なる影響を与え、定常状態の核小体構築には両者が必要であること、一方nesprin-1とnesprin-2は核小体構築において重複する機能を持つことを明らかにした(Satomi et al., Gene to Cells, 2020)。SUN1タンパク質の発現抑制により、ゴルジ体が細胞質に分散することを発端として解析を進め、SUN1/nesprin-2 LINC複合体が形成される状況下では、ゴルジ体は核近傍に集積すること、一方SUN1非存在時にはSUN2/nesprin-2 LINC複合体が形成され、KIF20Aの働きにより、ゴルジ体が細胞質に分散することを明らかにした(Hieda et al., Sic. Rep., 2021)。SUN1ノックアウト細胞では細胞牽引力が低下すること、SUN1の発現抑制により、RhoA-GTPの存在量は変化しないが、beta-actin 転写量が低下し、F-actinが減少すること、FAの成熟が抑制されること等を見出した。これらの現象は、細胞外からの力刺激に応答した、LINC複合体によるアクチン骨格制御の可能性を示唆する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep.
巻: 11 ページ: 5358
10.1038/s41598-021-84750-4.
Genes to Cells
巻: 11 ページ: 730-740
10.1111/gtc.12807.