研究実績の概要 |
中心体は動物細胞に保存された重要なオルガネラであり、細胞周期に一度だけ複製され、分裂後の細胞に均等に分配される。染色体複製と同様にこの複製プロセスは非常に重要であるが、分子メカニズムは未解明な部分が多い。我々の最近の研究成果を基に、分子ダイナミクスの観点から中心体複製を制御する分子メカニズムを明らかにすることが、本研究の目的である。そのため、関連分子のダイナミクスにより中心体複製プロセスが制御されるというモデルを仮定し、検証した。1)STED超解像イメージングによる中心体複製因子の空間パターンの可視化と定量、2)データ駆動型の数理モデリングによるシミュレーション解析、によって前年度得られたデータを統合し、論文として発表した(Takao et al, JCB, 2019)。微小空間における分子ダイナミクスによって緻密な空間パターンが形成されるという理論を提唱した。組織・細胞レベルで普遍的に見られる自己組織化メカニズムが分子スケールでの細胞機能制御にも関わっていることを新たに示すモデルである。また、ここではマスター制御因子であるPlk4に主に着目したが、さらにその他の重要因子についても解析を進め、複雑な分子相互作用ネットワークによる制御メカニズムを明らかにした。複数の主要分子のダイナミックな挙動とフィードバック制御メカニズムによる複雑なシステムを構成しているという仮説を支持する成果が得られた。その成果も論文として発表した(Takao et al, Biol Open, 2019)。
|