研究実績の概要 |
前年度に公表した学術論文(Otani et al., J Cell Biol, 2020)等の最近の進展を総合して密着結合の構造と機能について詳細に論じた総説を執筆し公表した(Otani and Furuse, Trends Cell Biol, 2021)。 前年度までに、Claudin/JAM-A KO細胞においては細胞が伸展した際にZO-1の断片化が認められることを観察した。今年度は、イメージングの例数を増やし定量解析を行った結果、Claudin/JAM-A KO細胞では細胞が一定の閾値以上に伸展された際にZO-1が断片化するのに対し、野生型細胞は同程度の伸展刺激に耐えることが出来ることを見出した。これらの結果は、ClaudinとJAM-Aが協調して細胞間接着の機械ストレスに対する抵抗性を生み出すのに寄与していることを示している。 ClaudinとJAM-Aが上皮可塑性に果たす役割を検討するために、集団的細胞移動に着目して解析を進めた結果、Claudin/JAM-A KO細胞において創傷治癒時の集団的細胞移動に異常が認められた。詳しい解析の結果、Claudin/JAM-A KO細胞では創傷治癒に伴うERKの活性化や細胞周期の再活性化に異常が認められた。先行研究において創傷治癒時のERKの活性化には細胞間接着を介した機械ストレスの細胞間伝播が重要であることが示されていることから、Claudin/JAM-Aが細胞間の機械ストレスの伝播に重要な役割を果たすことが示唆された。 密着結合にはClaudinとJAMに加え、CARと呼ばれる接着分子が存在する。Claudin/JAM-A/CAR KO細胞を作成したところ、ZO-1の細胞間接着部位への局在が減弱した。これらの結果から、細胞間接着構造の形成にはClaudin・JAM・CARが協調的に寄与することが明らかとなった。
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