研究課題
ParkinとPINK1は膜電位の低下した不良ミトコンドリアに選択的にユビキチン鎖を付加するE3ユビキチンリガーゼとユビキチンキナーゼである。Parkinは普段は活性がオフの状態でサイトゾルに局在しているが、膜電位の低下に伴い、速やかに不良ミトコンドリアへとリクルートされる。ミトコンドリア膜電位が低下するとPINK1が外膜に蓄積し、ユビキチンをリン酸化することがわかっている。さらにリン酸化ユビキチンはParkinと強く相互作用すること、ParkinのN末端のユビキチン様ドメインがPINK1によってリン酸化されるとParkinのE3リガーゼ活性が上昇することが知られている。そのため、Parkin-リン酸化ユビキチン-PINK1が正のフィードバックループを形成し、ユビキチン化反応を促進していると考えられる。しかし、上記の因子以外にも様々な因子がParkinのミトコンドリア移行に関与することが報告されている。これまでのトップダウン的なアプローチではその解析に限界があるため、本研究ではユビキチン反応系をもたない原核細胞内でParkinの活性化と基質のユビキチン化を再構成することを目指し、ミトコンドリア分解の初期反応の根本的な理解につながる。現在までにユビキチン化反応に必須となるE1酵素、E2酵素、ユビキチンを大腸菌に導入して、ユビキチン化反応の一部を再構成できている。当該年度はParkinとPINK1を大腸菌に発現し、ユビキチンシステムの再構成を行なった。ParkinやPINK1の発現量を厳密に調整する必要があったため、SDの周辺配列を指摘する工夫を行なった。
2: おおむね順調に進展している
ヒトで保存されている40種類のE2酵素の中から、Parkinを含むRBR型E3リガーゼの専用E2であるUbcH7をParkinとユビキチンとE1酵素とともに大腸菌に導入した。その結果、Parkin依存的なユビキチン反応が亢進することがわかった。ただし、大腸菌内でのParkinの発現量が多く、そのほとんどは不溶性画分に回収されることがわかった。そこで、SD近傍の配列を指摘化することで、この問題を解決した。さらにParkin依存的なミトコンドリア分解をほ乳類細胞で観察している過程で予想外の発見をした。ユビキチン化を受けた不良ミトコンドリアはオートファジー依存的に分解されるが、そのプロセスに必須あるアダプター分子: optineurinがオートファジーコアタンパク質であるATG9Aベシクルと直接相互作用することを見出した。この結果はJ. Cell Biologyに報告した。総合的に判断して、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
ユビキチン化反応に必要な遺伝子を大腸菌ゲノムに組み込む準備を行なっている。それが出来次第、順次、遺伝子をゲノムに挿入していく予定である。挿入した遺伝子の発現を制御できるようにアラビノースプロモーターを組み込んだ細胞株も準備する予定である。遺伝子の発現を確認できれば、Parkinの膜移行とユビキチン化反応の亢進を調べる。
2020年度に海外学会で本研究課題に関する発表を行なう予定である。また、本研究課題を論文にするための費用が必要となったため、繰り越しを行なった。
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巻: 20 ページ: -
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http://www.igakuken.or.jp/protein/