研究課題/領域番号 |
18K06238
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
小林 昇平 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 研究マネージャー (40425765)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人工ビーズ / 核膜形成 / 構成的アプローチ / importin-beta / Ran変異体 |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者がこれまでに開発してきた「生細胞内への人工ビーズ導入法」を利用した構成的アプローチによって、ビーズ周囲に機能的な核膜を形成させる条件を探索し、核膜形成機構の一旦を明らかにすることを目的とする。R1年度には、昨年度に引き続き、GFP-importin-beta発現株等に対して、抗GFP抗体結合ビーズを導入して細胞内で目的タンパク質結合ビーズを構築し、ビーズ周囲に形成された膜構造について、核膜関連因子に対する免疫染色、及び、生細胞蛍光-電子相関顕微鏡法を用いた膜長計測等の計測を行なった。その結果、これまでに見出していたGFP-importin-beta結合ビーズに加え、GFP-Ran変異体(Q69L)結合ビーズ等の場合でも、核膜孔複合体を有する膜構造が効率よくビーズ周囲に形成されることが分かった。次に、これらのビーズを保持する細胞に、SV40 large T抗原型の核移行シグナル配列を付与した赤色蛍光標識タンパク質(NLSタンパク)をマイクロインジェクションし、ビーズ表面に集積するかどうかを調べた。その結果、GFP-importin-beta結合ビーズでは高頻度でビーズ表面へのシグナルの集積が見られたのに対し、RanやRan変異体を結合させたビーズでは、NLSタンパクの集積は見られなかった。一方、SV40型NLSタンパクとは異なる核移行シグナル配列を持つタンパク質は、GFP-importin-betaビーズ周囲に集積しなかった。これらのことから、GFP-importin-beta結合ビーズの周囲に形成された膜構造は、主核の核膜に類似した部分はあるものの、機能的には同一ではないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初に予定していたDNAコンストラクトの設計・作製及びそれらを用いた安定発現株の取得については完了している。また、これらの株について、抗GFP抗体ビーズを用いた核膜形成実験をほぼ完了し、形成された核膜様構造の性質についても解析が完了したため、研究計画は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、一種類のエフェクター分子を結合させたビーズの周囲に形成される膜構造は、主核の核膜に近い性質を持つものの、核膜機能を完全に再現するには不十分であることが示唆された。一方で、エフェクター因子ごとに、ビーズ周囲に集積される核膜関連因子に違いがあることも明らかとなった。そこで次年度には、これまでの結果を踏まえつつ、複数種類の分子を結合させたビーズの周囲で見られる核膜形成について免疫染色法及び生細胞蛍光-電子相関顕微鏡法等による解析を行う。これによって、核膜形成における個々の因子の役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度当初に計画していた実験が想定よりも順調に進捗したこと、及び、得られたデータの解析やとりまとめに時間を要したことなどから、実験資料の調製や観察条件の最適化に要した消耗品費が少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額分については、得られた実験結果に基づくより発展的な研究や成果発表等の目的で、翌年度分と合わせて効率よく使用する予定である。
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