研究課題/領域番号 |
18K06239
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 玄武 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20550073)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 正中ヒレ / Twin-tail / ogon / 脊椎動物付属肢進化 |
研究実績の概要 |
顎口類の鍵革新である有対ヒレが進化上どのように獲得されたのかは、150年前から注目される重要なテーマである。現在有対ヒレ進化は、祖先形質である正中ヒレの発生メカニズムを、何らかの形で体側にリクルートすることで獲得したと考えられている。しかし、どのように正中に一つのものを有対の状態にしたのか、という問いは依然不明なままである。そこで本研究では、正中ヒレが有対化する変異形態(Twin-tail形態)を持つゼブラフィッシュ変異体ogonに着目し、その形成機構から付属肢有対化の進化機構を解明することを目指す。 2019年度は、主にトランスジェニックフィッシュを用いた強制発現系や機能阻害剤(BMP機能阻害剤K02288、FGF機能阻害剤SU5402)によって、BMPシグナルとFGFシグナル、およびそのクロストークのTwin-tail形態発生における役割を解析した。特に、その強制発現や機能阻害を行った時の遺伝子発現状態の変遷を解析し、それらシグナルの経時的な変化の詳細を観察した。その結果、機能阻害実験からも、Twin-tail形成における発生初期のみにみられた異時的なBMPシグナルの要求性を確認した。またFGFシグナルは、強制発現によってTwin-tail形態を誘導できないが、機能阻害によりヒレ形成不全が起こることから、Twin-tail形態に必要なシグナルであることが示唆された。これらの結果から、Twin-tail形態の誘導には、初期胚でのBMPシグナルによるヒレ形成可能領域の拡大、そしてその拡大した可能領域のなかでFGFシグナルによるヒレ形成誘導により発生してくる可能性が考えらえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ogon系統にトランスジェニック系統を掛け合わせた魚を作成し、十分に必要な機能解析が行えた。また、昨年発見した異所的な体節形成遺伝子の強制発現であるが、Injected fishでのTransient Assayを行い、予備的であるが興味深い結果を得ている。しかし、強制発現コンストラクトの作成に時間がかかり、現在ようやくF1世代のスクリーニングを行える体制が整いつつある状況である。以降、できるだけ早く系統化し、機能解析を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、Twin-tail形態の誘導にBMPシグナルによるヒレ形成可能領域の拡大と、そしてその拡大した可能領域のなかでFGFシグナルによるヒレ形成誘導が重要であることが示唆された。さらに現在その誘導可能域のなかで、どのようにして中央にヒレが形成されない領域が出来るのかを、体節形成遺伝子に注目し、機能解析予定である。これらの解析が十分に行えたならば、どのようにして正中に一つのヒレから有対化したヒレが形作られるのかが理解されるはずである。また、これまで全く解明されていない誘導可能域自体の成立メカニズムの解析にもチャレンジする。具体的には、体節の細胞死誘導TGを用い体節の欠損行いつつ、FGFやBMPシグナルの強制発現をする事で誘導可能域と体節の有無の関係を解析する。さらに、この発生メカニズムが系統進化上保存されているかどうかを、正中膜ヒレをもつ両生類胚など他の脊椎動物胚で経時的な遺伝子発現解析をおこない、統進化関係を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行にあたりトランスジェニックゼブラフィッシュ(TG)の作成を行う必要があったが、計画していた遺伝子導入カセットの作成に時間がかかり、予定より維持する必要があるTG系統数が減った。そのため、今年度使用予定額の一部を繰り越し、来年度のトランスジェニックフィッシュの作成の遂行のためにあてる。また、その系統を用いた分子生物学実験も、来年度に行う予定である。
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