研究課題/領域番号 |
18K06240
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 良樹 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (30508817)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生殖系列 / メチオニン代謝 / レトロトランスポゾン / S-アデノシルメチオニン / キイロショウジョウバエ / エピゲノム / N6mA修飾 / 老化 |
研究実績の概要 |
ショウジョウバエ卵形成課程におけるS-アデノシルメチオニン(SAM)の産生抑制の意義について解析している。当初、本SAMの産生抑制は生殖系列ゲノムを損傷する要因でるレトロトランスポゾンの発現抑制に寄与する結果を得ており、このメカニズムについて解析を行なっていた。これに加えて、本研究期間において新たにSAMの産生抑制が卵形成過程の老化を抑制する働きがあることを見出したので併せて検証している。令和1年までに、SAMの産生抑制がショウジョウバエの主要なゲノムメチル化修飾であるN6mA修飾を抑制することで、レトロトランスポゾンの発現を転写レベルで抑制するという結果を得ており、これについて論文作成中である。一方、SAMの産生が卵形成過程の老化に与える影響について、その詳細は明らかではなかった。昨年度までに卵巣の老化に伴い、SAMの含有量およびSAM合成酵素(Sam-S)の発現上昇が起きること、さらに生殖系列においてSam-Sの機能を遺伝学的に操作した場合、加齢に伴うSam-Sの発現および卵巣のSAM含有量が操作に伴い変動することが明らかにした。そこで令和2年度は、これらが老化指標の変化に与える影響を観察した。その結果、二つの老化指標(生殖幹細胞数の減少、異常卵室の出現)がSam-Sの依存的に変動することが明らかとなった。以上の結果は、卵巣の老化の主要要因が加齢に伴うSAMの上昇であることを示している。そこで哺乳動物(マウス)の生殖組織(卵巣、精巣)および脳組織において同様に加齢に伴うSAMの増加が見られるか検証した。その結果、これらの組織においても加齢に伴いSAM増加が観察された。以上の結果は、SAMの増加は動物種や組織を超えた老化要因であることを強く示唆している。現在、SAMの合成制御による抗老化作用を主眼とした特許の出願準備(令和3年7月出願予定)および論文作成を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度前半は新型コロナウィルスの影響で、研究を行うことができなかった。その中でも、ショウジョウバエの飼育は行い、加齢個体を得ることができたので、研究制限の解除後に迅速に老化指標の解析を行い上記の結果を得た。また共同研究を通じて、哺乳類の各組織において加齢に伴うSAM含有量の変化や、培養細胞を用いた機能解析などを年度の後半に行い、特許出願および論文作成への目処をつけた。オンラインで可能な範囲で共同研究社および所属組織の特許関連の部署と打ち合わせを行い、特許事務所の選定や方針などを決めた。その結果、令和3年度7月の出願予定までこぎつけ、また論文の作成も現在行っている。
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今後の研究の推進方策 |
老化への影響については、上述のように特許出願への準備を滞りなく行う予定である。また併せて、老化への影響については先に論文投稿を予定している。これが終わり次第、トランスポゾンの抑制についても早急に論文の投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で、研究制限が設けられ、研究の実施が困難であったために、研究機関の延長を決めたため。
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