研究課題
脊椎動物胚の尾芽は、脊髄や中軸・沿軸中胚葉などを生み出すことで後方への胚体伸長を担う未分化胚領域であり、ここでは多様な多分化能幹細胞が特定のニッチ下で維持されている。しかし、この領域にどのような細胞群が存在するのか、尾芽の特殊なニッチがどのように生じるのか、脊髄伸長はどのような制御を受けるのかについての詳細は知られていない状況にあった。本研究では、ゼブラフィッシュ胚の後端でマウスOct4と対応するPouV遺伝子pou5f3が発現しており、その機能阻害が体軸伸長を阻害するという研究代表者のグループの発見に着目し、尾芽からの神経発生の制御機構を、pou5f3を中心に据えて検討した。まず、体節形成初期と中期における胚体後端での尾芽関連遺伝子及びpou5f3の発現の詳細、そしてその変化過程をin situ hybridizationにより明らかにした。特に、pou5f3が初期には尾芽の神経領域、その後は神経管後端に発現することを確認した。次に、pou5f3の機能をドミナントネガティブ遺伝子の誘導により阻害し、その尾芽発生における効果を検討した。並行して、CRISPR/Cas9法によりpou5f3遺伝子の破壊を行い、表現型解析を行った。結果として、pou5f3は自身の発現には抑制的である一方、各種神経発生遺伝子を活性化すること、各種分泌因子のシグナルに関わる遺伝子の発現制御にも関わることを明らかにした。また、pou5f3が中胚葉形成遺伝子に対しては抑制的に働くことも示した。機能阻害実験により示されたこれらのpou5f3の作用の少なくとも一部は、pou5f3-ERT2融合タンパク質のtamoxifenによる機能活性化でも確認された。以上より、pou5f3は神経管後端において尾芽から移行してくる未分化細胞の神経発生を活性化し、脊髄伸長に寄与することが示唆されたといえる。
すべて 2021 その他
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Developmental Biology
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http://devbiol.seitai.saitama-u.ac.jp