研究課題/領域番号 |
18K06246
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福山 征光 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (20422389)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 線虫 / 脂肪酸 / 栄養 / 成長 |
研究実績の概要 |
本研究は、三大栄養素の一つである脂質が成長を促進するメカニズムを線虫をもちいて明らかにすることを試みた。 これまでの我々の研究により、餌である大腸菌の代わりに、脂肪酸と必須アミノ酸を投与するだけで、個体成長を促進することが知られている(Curr Biol 2015)。我々は、脂肪酸投与によって個体成長を促進する遺伝学的経路の解明を目指し、脂肪酸を投与しなくとも(必須アミノ酸を投与するだけで)ある程度成長がすることができる変異体をスクリーニングし、hhat-2変異体を単離した。 これまでに、hhat-2変異体をアミノ酸投与した際に発現の亢進がみられる脂質生合成に関与する遺伝子を複数見出していたので、これらの遺伝子とhhat-2変異体との遺伝学的相互作用を調べた。その結果、見出した脂質生合成に関与する遺伝子のうちの一つをhhat-2変異体にて機能阻害すると、アミノ酸投与による個体成長が抑制されることを見出した。また、RNAseq解析により、上述したhhat-2変異体をアミノ酸投与した際に発現の亢進がみられる脂質生合成に関与する2つの遺伝子は、野生型にエタノールや脂肪酸投与によっても発現亢進することを見出した。興味深いことに、これらの脂質生合成遺伝子群は、脂肪酸やエタノールと同様の炭素源であるブドウ糖を投与しても、その発現は亢進しない。 これまでの研究で、特定の脂質生合成遺伝子群が線虫の個体成長に必須であり、それらの脂質代謝酵素はmTORC1の活性化に寄与する可能性が示唆されている。興味深いことに、この特定の脂質生合成遺伝子群と、我々の見出した脂質生合成遺伝子群は同一経路で機能する。そこで、これらの脂質代謝経路を阻害した際のmTORC1への影響を評価するべく、Crispr/Cas9システムをもちい、蛍光タンパク質タグをmTORC1関連遺伝子群に挿入した線虫を複数系統作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度前半は、コロナ禍による非常事態宣言下のもと、これまでにない行動規範のもと研究をすすめることとなり、全体的に滞りがちであった。また、Crispr/Cas9システムの導入と条件最適化にも時間を要したが、現在ではルーチンで運用できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光タンパク質タグをmTORC1関連遺伝子群に挿入した線虫を複数系統作成することができたので、見出した脂質代謝を阻害した際のそれぞれのmTORC1因子群の細胞内局在を調べる。培養細胞ではアミノ酸飢餓条件下でmTORC1がリソソームから遊離することが報告されている。しかしながら、培養細胞とは異なり、極端なアミノ酸変動がない生体内でmTORC1の挙動に関しては詳細な報告が乏しい。そこで、脂質や必須アミノ酸を投与、あるいは欠乏させた際の、野生型やhhat-2変異体におけるmTORC1の局在を比較する。また、神経で機能するhhat-2と、腸で機能する脂質生合成因子との連関を明らかにすべくHHAT-2相互作用因子の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度前半は研究が著しく遅れたため、次年度に繰越すことにより、提案した研究課題の遂行を目指すことにした。
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