研究課題
胎生中期マウスの大動脈に生じる造血幹細胞を含む血液細胞塊について、以前の研究で、血液細胞塊に発現する転写因子Sox17を、血液細胞塊構成細胞に強制発現すると、in vitroにおいて未分化性を有する血球系細胞塊の形成が再現・維持されることを示した。そこで転写因子Sox17に注目して、血液細胞塊における造血幹細胞の発生・成熟・維持に関わる分子機構を明らかとするために、本年度は以下の実験を行った。1) Sox17プロモーター制御下でGFPを発現する妊娠10.5日胎仔の血液細胞塊構成細胞を、Sox17発現および非発現細胞に分画し、RNAシークエンス解析を行った。2) RNAシークエンス解析の結果から遺伝子発現様式を比較すると、Sox17発現細胞集団においてGTPase活性を持つGimapファミリー遺伝子が高発現していた。また、血液細胞塊構成細胞にSox17を強制発現した細胞において、Gimapファミリー遺伝子の発現が上昇していた。Gimapファミリー遺伝子を血液細胞塊構成細胞に導入すると、Gimap6遺伝子導入細胞において、Sox17の強制発現を行わなくとも、多系列血液細胞を含む混合コロニー形成能(多分化能)が高くなっていた。さらにSox17強制発現細胞において、shRNA導入によりGimap6の遺伝子発現を減少させたところ、 混合コロニーの形成能は減少した。以上の結果から、マウス胎生中期における大動脈内腔で血管内皮細胞に接する造血幹細胞を含む細胞塊の造血活性の維持には、転写因子Sox17によるGIMAP6の発現が寄与する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画で掲げていた4つの内容に対して、3つの計画について結果を示せているため。
現在、さらに転写因子Sox17の下流に存在する新規候補分子の探索、Gimapファミリー分子の造血能に対する分子機構の解明を行っている。
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