研究課題/領域番号 |
18K06250
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
羽毛田 聡子 (鈴木聡子) 東京工業大学, 生命理工学院, 研究員 (90631482)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 軸索投射 / シナプス形成 / ショウジョウバエ / 視神経系 |
研究実績の概要 |
I) 視神経の投射において二種の脱リン酸化酵素、LAR、Ptp69Dと接着分子N-Cadherin (CadN)、Capricious(Caps)の 4分子の相互作用を昨年度に引き続き調べた。変異株の生存率が低く解析できずにいたPtp69Dを含む二重変異株の観察に成功し、ptp69DとNcadの2重変異株はLARとPtp69Dの2重変異株と同様のラミナにR7軸索がとどまるという結果が得られた。一方、Ptp69DとCapsの2重変異株は、軸索の投射は正常であるものの視神経細胞が細胞死を起こすことが分かった。これまでの結果と合わせて定量し、統計学的に解析したところ、NcadはLarと同様の軸索をM6層に安定かさせる機能を持つが、Capsの変異はLAR、Ptp69D、CadNの単変異株のいずれに対しても表現型を有意に変化させなかったことより、軸索の安定化には大きな役割を果たしていないことが示唆された。 II) 軸索投射とシナプス形成の関係を明らかにすることを試みた。視神経シナプス形成をつかさどる分子メカニズムをCadNおよびLARを中心にして解析した。哺乳類のシナプス形成においてLARはグルタミン酸受容体 (GluR)と相互作用するという報告がされていたことから、ショウジョウバエの5種類のGluRに対して、RNAiを用いて遺伝子発現をノックダウンし、シナプス形成を解析したが異常は見られなかった。そこで、哺乳類でLARとNlgに相互作用があることが分かっているため、CadNおよびLARに対して、ショウジョウバエの2種のNrxと3種のNlgとの相互作用を遺伝学的に解析する系統を作成している。これまでCadNの変異株で発生初期からNrx1を過剰発現させた系で、シナプスがM1層に形成されることが分かった。この結果はシナプス形成と軸索投射は密に関係していることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析が困難であった2重変異株の観察に成功し、LAR、Ptp69D、N-Cadherin (CadN)、Capricious(Caps)の 4分子の相互作用を全組み合わせ解析を終えることができた。また、シナプス形成の解析では、学会等でえられた新たな知見を加味して当初の研究計画を膨らませ、順調に遂行することができている。
|
今後の研究の推進方策 |
LAR、Ptp69D、N-Cadherin (CadN)、Capricious(Caps)の 4分子の相互作用は主に発現抑制体を用いて解析してきたが、さらに過剰発現系を用いた解析を加えて、これまでに得られた結果を裏付ける。ショウジョウバエの2種のNrxと3種のNlgのLARやCadNにたいする相互作用を解析し、シナプス形成と軸索投射におけるLARとCadNの機能がどのように重複・分解できるか解明する。特にNlgは視神経側でなく、投射先である後シナプスの形成に関わっていることが知られているため、視神経投射やシナプス形成において投射先の神経におけるCadNやNlgの機能も解析する。
|