研究課題/領域番号 |
18K06251
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
林 貴史 金沢大学, 新学術創成研究機構, 特任助教 (50553765)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / タイリング / 複眼 / ボロノイ分割 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
平成30年度は野生型(wt)および小眼変異体(os; outstretched)の蛹期における発生過程をlive imaging手法を用いて観察し、六角形/四角形タイリングパターンが生じる過程を詳細に調べた。蛹期の初期は観察が困難であるため、蛹期20%の時点から観察を開始し、タイリングがほぼ終了する蛹期50%まで継続した。その結果、個眼が同心円状に成長しながら六角形/四角形タイリングパターンが形成されていく様子が明らかになった。 また複眼内における張力分布を調べるため、Laser ablationにより細胞膜を破壊し、その応答を調べた。現在までに野生型(wt)、小眼変異体(os)および複眼の背側半分を欠損したハエ(mirr-GAL4xUAS-eyaRNAi)の蛹期28%におけるデータを多数集めることができた。今後はさらに実験を継続し、そこから得られたデータをもとに野生型と小眼変異体の間で張力分布にどのような違いがあるかを解析する。 コンピュータシミュレーションに関しては大きな進展があった。当初はvertex modelを用いてタイリングパターンを再現することを考えていたが、一般的なvertex modelではタイリングパターンを再現するのは非常に困難であることが明らかになった。しかしながらその一方で単純なボロノイ分割を用いることにより、六角形/四角形タイリングパターンが非常に高精度で再現されることが明らかとなった。このことからタイリングパターンの決定には発生初期における個眼の分布パターンと個眼の同心円状の成長により決定されていることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
live imagingによる発生過程の観察およびLaser ablationによる張力分布の測定に関しては実験が進行しており、実際に順調に実験結果が得られている。またコンピュータシミュレーションについては当初の予定とは少し異なる方向に進んでいるが、ボロノイ分割を用いることによりタイリングメカニズムの形成機構の本質が明らかとなってきた。この点はとても重要であり、タイリングメカニズムの形成機構について一気に理解が進んだことは予想以上の成果である。細胞骨格とタイリングとの関係に関しては当初の計画より少々遅れている部分もあるが、全体としては実験、理論(シミュレーション)の両面において満足できる成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に関しては特に大きな変更点はなく、基本的に当初の計画通りにタイリングパターンについての研究を行う予定である。唯一の変更点はシミュレーションの部分でvertex modelではなくボロノイ分割を用いることであるが、この点に関してもシミュレーションに用いる主要なモデルをvertex modelからボロノイ分割に変更しただけであり、研究の基本的な枠組みには変化はない。実験に関しては概ね順調に進んでおり特に心配な点はない。シミュレーションに関しては古典的なボロノイ分割をより一般的なものへと発展させた重み付けボロノイ分割を用いることにより、複眼におけるタイリングパターン形成のより一般的なメカニズムを明らかにしたい。またvertex modelに関しても一般的なモデルをさらに発展させ、細胞の圧力などを考慮したモデルを考案することにより、四角形タイリングに要求される条件を明らかにしたい。
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