研究実績の概要 |
令和元年度は野生型(w)及びいくつかの小眼変異体(os, ey, Lobe, UAS-fng/c311-GAL4, UAS-RNAi(eya+so)/mirr-GAL4)の成虫複眼の表面構造を捜査型電子顕微鏡(SEM)を用いて調べた。野生型の成虫複眼においては個眼は規則正しい六角形配置を示す一方で、小眼変異体では四角形配置を示すことが明確に示された。小眼変異体に関しては全ての系統が同様の表現系を示す訳ではなく、osが規則正しい複眼配置を示す一方で、eyやLobeは配置がやや不規則であり乱雑な部分が目立った。UAS-fng/c311-GAL4は規則正しい配置を示したが、眼の大きさに関して個体差が大きく、左右の眼についても大きさがかなり異なる場合が高頻度で観察された。RNAi(eya+so)/mirr-GAL4の表現系は他の小眼変異体に比べて四角形化の度合いがやや弱かった。この点に関しては、この系統の眼の大きさが他の系統と比べてやや大きかったために四角形化の傾向が比較的弱かったためと考えられた。 また平成30年度に続き、Laser ablationを用いて複眼内における張力分布を調べた。野生型(wt)、小眼変異体(os)および複眼の背側半分を欠損したハエ(UAS-RNAi(eya+so)/mirr-GAL4)の蛹期における張力分布を解析した。その結果、野生型と比較して小眼変異体(os)では背腹軸方向の張力が前後軸方向と比べて相対的に強くなっていることが示された。しかしながら弱い四角形化を示すUAS-RNAi(eya+so)/mirr-GAL4においてはこの背腹軸方向への偏向が野生型と比べて僅かに強い程度に留まっていることが明らかになった。 シミュレーションに関しては重み付きボロノイ分割を発展させた。この方法によって複眼のタイリングパターンを広く一般的に近似できることを示した。
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