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2021 年度 実施状況報告書

原腸形成期の内胚葉は分泌性因子によって内臓中胚葉を誘引する

研究課題

研究課題/領域番号 18K06258
研究機関山口大学

研究代表者

村上 柳太郎  山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (40182109)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワードショウジョウバエ / 内胚葉 / 中腸 / 部域分化 / caudal
研究実績の概要

研究計画の方向を、内胚葉から内臓中胚葉への作用から内胚葉自体の部域分化メカニズムに修正して以降、この過程に関わる最重要な遺伝子が ParaHOX遺伝子のひとつである caudal(cad)であることが明らかとなった。2021年度はcadによって分化制御作用を受ける範囲(cad 感受性領域)について、発現領域の異なるさまざまな GAL4系統を用いて強制発現実験を行い、その表現型を解析した結果、内胚葉については前方内胚葉、後方内胚葉ともに Zygotic な cad 強制発現によって後方内胚葉としての分化形質(中腸第3チェンバー後半、中腸第4チェンバー特異的なマーカー遺伝子の発現誘導)が誘導されることが分かった。一方、原腸陥入時に内胚葉に連結したまま連続的に陥入する外胚葉性組織である前腸と後腸予定域は cad の強制発現にまったく反応しなかった。これは内胚葉の部域分化機構と外胚葉性消化管となる前腸・後腸領域の部域分化機構が、原腸陥入時には完全に異なっていることを示している。また、2022年度までの研究で、内臓中胚葉で発現する HOX遺伝子 Ubx の支配下で産生される分泌性シグナル因子 Dpp による内胚葉への分化誘導作用が、第2チェンバーだけでなく第3チェンバー前半にも及んでいることが示されていたが、その後cad と Dpp の二重強制発現実験を行ったところ、Dpp の作用が 第3チェンバー後半と第4チェンバーにも及ぶことを示唆する結果が得られ、内胚葉の部域分化における内臓中胚葉の役割が、従来信じられてきたよりもはるかに広い範囲に及んでいるものと予想される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画では最も大きなテーマとして内胚葉から内臓中胚葉への作用因子の同定を挙げており、その候補として Ance に着目して研究を進めていたが、その過程で、現存する突然変異が Ance 遺伝子の異常ではなく jeb 遺伝子の異常であることがわかった。それに対応して、研究計画に含まれていた、内胚葉自体に内在する分化制御因子の探求に研究をシフトしてきた。その結果、内胚葉の後半部の分化を決定する主要因として caudal 遺伝子が同定され、さらに、caudal と関連して働く因子として内臓中胚葉が産生する Dpp が同定された。この両因子の欠損、及び強制発現が、内胚葉の部域分化にどのように影響するか、各部域(チェンバー)のマーカー遺伝子発現を指標として詳細に調べており、その概要が判明しつつあるが、研究内容の重点を変えたことによる遅れを取り戻せず、2021年度中に実験を終えることはできず、論文公表もできなかった。今年度は、これまでの研究結果で不足している部分を補う実験を行い、研究として完成させる予定で、すでに必須な結果の大部分を得ており、論文執筆を開始している。

今後の研究の推進方策

研究計画は完成に近づいており、論文としてまとめる段階になっており、実験は不足しているデータを集めるのが主になっている。論文執筆を最優先としつつ学会発表も積極的に行う予定である。論文投稿後に再実験が必要な場合も年度内で終了できるようにしたい。

次年度使用額が生じた理由

研究計画の主要な実験内容は内胚葉部域特異的な遺伝子のスクリーニングと、その機能の解析であるが、in situ ハイブリダイゼーションの技術的なトラブルが生じ、その原因究明に時間がかかってしまい、予定の実験を終えることができなかった。また、新型コロナの影響で、海外の学会発表のために用意していた旅費を使わなかったことで、次年度使用額が生じた。この研究費は不足している実験と、学会参加旅費、及び論文投稿の費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] ショウジョウバエ中腸の部域分化におけるDppシグナルの作用2021

    • 著者名/発表者名
      土方 亮 リチャード、上岡 早紀、田上 和、原田 由美子、村上 柳太郎
    • 学会等名
      2021年度 生物系三学会 中国四国地区合同大会(香川)
  • [学会発表] Function of Dpp in the regional differentiation of the Drosophila midgut2021

    • 著者名/発表者名
      土方 亮 リチャード、藤本 啓太、上岡 早紀、有重 昌彦、下岡 リリー、花田 舞、永井 星一、原田 由美子、村上 柳太郎
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会

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公開日: 2022-12-28  

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